船場吉兆

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本来の表記は「船場」です。この記事に付けられた題名は、技術的な制限により、記事名の制約から不正確なものとなっています。

船場吉兆(せんばきっちょう)はかつて大阪市中央区に存在した吉兆グループの高級料亭、並びにその運営会社である。「吉」の正確な表記は「」(「土」の下に「口」、つちよし)である。

その後正徳社長と経営陣でもあった妻子らにより1999年には福岡市に博多店を開店して九州に進出し、また大阪の阪急百貨店や福岡の博多大丸と提携し、吉兆ブランドの商品を販売するなど多角化を進めていた。

しかし過剰ともいえる採算重視の方針が仇となり、2007年賞味期限切れや産地偽装問題が発覚し全店舗で営業を休止。翌2008年1月に民事再生法の適用や経営陣刷新(正徳社長をはじめとする佐知子新社長を除く幹部の退任)を行った上で営業を再開したが、2008年5月、客の食べ残し料理の使い回しが発覚。これが追い打ちをかけることになり、客足が遠退き採算が見込めなくなった為、5月28日に大阪市保健所に飲食店の廃業届を提出した。

なお、他の吉兆グループ(本吉兆、京都吉兆、神戸吉兆、東京吉兆)とはグループ内であったものの定期的な会合を行う程度で資本関係は一切なく、営業方針もそれぞれに委ねられていた。しかし船場吉兆の度重なる不祥事により改めて食の安全性について適正に行われているか調査する必要が生じた為、コンプライアンス委員会を新設し、共同で監査を行っている。

2008年5月25日まで営業していた店舗
  • 船場本店 ‐ 大阪市中央区北久宝寺町、元吉兆船場店
2008年1月22日の時点で閉鎖された店舗

消費/賞味期限切れの菓子・惣菜の販売

2007年11月1日、「吉兆天神フードパーク」で販売していた「のふくませ煮」などの惣菜の内、消費期限・賞味期限切れの食材を岩田屋新館7階にあった「吉兆天神店」に流していたことが発覚。また、船場吉兆も12商品の惣菜で期限切れ販売をしていたと認めた。

地鶏の産地偽装

船場吉兆側は「ブロイラーの件は業者が地鶏と偽って納入した、産地偽装の件は現場の仕入担当者が独断で行った」としているが、前者に関して業者は「地鶏として船場吉兆に販売したことは無い」、後者に関して店員や業者は「値段や品質も違うのは明らかであり、船場吉兆役員も承知していた」とそれぞれ証言しており、両者の言い分は真っ向から対立した。

みそ漬けの産地偽装

直接の容疑は、同年3 - 10月にかけ、「牛肉みそ漬け」「牛肉みそ漬けと鶏肉みそ漬けセット」「牛肉みそ漬けと明太子セット」の三つのセットの原材料として、佐賀県産と鹿児島県産の牛肉を使って加工した商品を箱詰めした。そのうえで「但馬牛」「三田牛」などと表示したシールをはり、東京都内のギフト販売会社と大阪市内の阪急百貨店に計101個を納入した疑い。この三つの商品は約3万 - 約1万5000円で販売していたという。

船場吉兆の幹部らは商品表示の一部に虚偽があった事実については認めているが、「会社ぐるみではない」「幹部の承知事項ではない」などと組織的な関与を否定してきた。だが、偽装商品が多岐に渡ることなどから末端社員らの単独行為とは考えにくく、府警は不正が長期間継続・放置されてきた疑いが強いとみている。

無許可での梅酒製造及び販売

船場吉兆が、酒類の製造を行うのに必要な酒税法上の許可を得ずに梅酒を製造していたことが明らかとなった。報道によると、本店と博多店で自家製の梅酒を製造し、博多店が1999年頃、本店はそれ以前から、他に心斎橋店と天神店でも客に供していた。なお、国税当局から「酒税法に抵触する疑いがある」と指摘を受けて、船場吉兆側は「営業再開の際にはメニューから外す」とした。

客の食べ残しの再提供

4店舗全店で客が残した料理をいったん回収し、別の客に提供していた。

天ぷら」は揚げ直して出すこともあり「アユ塩焼き」は焼き直し「アユのおどり揚げ」は二度揚げしていた。わさびは、形が崩れて下げられてきたものをわさび醤油として出し直し、刺し身は盛り直していた。刺し身のツマはパート従業員が洗い、造り場(調理場)に持参していた。料亭経営を取り仕切っていた当時の湯木正徳前社長の指示で2007年11月の営業休止前まで常態化していたとされる。 従業員はこれらの使い回しの料理について「下座の客に出すことが多かったように思う」と話している 。また使い回しが発覚した後に湯木佐知子社長は「食べ残し」と呼ばず「手付かずのお料理」と呼ぶようにマスコミに要望した。

事後説明及び廃業までの経過

当初、船場吉兆側は一連の偽装を「パートの女性らの独断によるもの」としていたが、2007年11月14日、売場責任者だったパートの女性ら4人が記者会見し、「店長(湯木尚治取締役)から1か月期限を延ばして売るように直接指示を受けて賞味期限のラベルを張り替えていた」と語り、また偽装問題発覚後の10月31日夜、「全責任はパート女性にある」とする会社作成の「事故報告書」に署名・押印を尚治に求められ、パート女性が拒否すると「それは言い訳や」と怒鳴った上、翌日も期限切れ商品を販売した理由を紙に書くよう迫られたと一連の経緯及び船場吉兆経営陣の関与を明らかにした。なお、パート女性は押し問答の末、1時間半後に署名せずに帰宅している。

2008年1月16日大阪地方裁判所民事再生法適用を申請。これを受けて裁判所は保全命令を出した。負債総額は、金融機関への債務が約6億、損害保証債務が約2億の計・約8億円であり、新社長に就任した湯木佐知子以外の役員は全員が引責辞任した。1月21日、大阪地裁より民事再生手続の開始決定を受けて佐知子新社長が会見を開いて一連の経緯について再度謝罪し、同席した料理人らより佐知子新社長就任について説明を行った。また、本店を22日に営業再開する一方、心斎橋店及び天神店の運営から撤退、再生計画は2008年8月5日までに提出するとして、一度は再建の道を歩むかに見えた。

しかし2008年5月、「客の食べ残した料理の使い回し」を10年以上も前から行っていたことが発覚して以降、予約のキャンセルが相次ぎ、客が発覚前の半分、末期には3分の1程度に減少。資金繰りに窮し、グループ内外の支援を受けることもできなかったことから、2008年5月28日、大阪市保健所に飲食店の廃業届を提出し、経営破綻。大阪地裁に民事再生手続の廃止を申し立てた。同年6月23日、破産手続開始決定。

廃業直前には大阪府料理業生活衛生同業組合から「料亭の評判を傷つけた責任は重大」と退会勧告を受け、組合を脱退している。

なお、船場吉兆本店のあった建物はその後「NLC船場ビル」というテナントビルとして再整備された。

役員・従業員のその後

船場吉兆廃業と共に残っていた従業員も全員解雇となり湯木正徳・佐知子夫妻も廃業時に自己破産したが、佐知子は2014年時点で吉兆グループの持ち株会社である株式会社吉兆の役員を務めている。また、次男の尚治は2011年北新地 湯木という懐石料理店を開業しており、2014年時点で北新地に2店舗展開している。