「理想の空港サービス」のコンセプトから
誕生した「フライトビジョン」

 航空券のチケットレス化など交通インフラの変化や、ライフスタイルの変化などにより、空港利用者の動線や利用シーンにも新たな変化が見られます。こうした動向を的確にとらえることが、空港利用者の満足度向上につながります。
 MDISは、空港情報事業とエアライン事業を融合させた新しい事業分野の創出を行うにあたり、三菱電機株式会社のデザイン研究所を中心に、情報技術総合研究所、先端技術総合研究所と連携して、空港利用者視点で「理想的な空港サービス」のコンセプトを作り、デザインアプローチ手法による事業企画を立案しました。その成果の1つが、利用者が「知りたい情報」と「気になる広告」を連動したデジタルサイネージ「フライトビジョン」です。
 社会インフラ事業本部 官公・航空システム事業部 事業部長の村田 幸久氏は、背景を次のように語ります。
 「三菱電機グループは、航空管制システム、フライトインフォメーションシステム(FIS)、エアラインシステムに関して多くの実績と長年にわたり蓄積したノウハウがあります。空港関係者と利用者のニーズを併せて分析した結果、FISとデジタルサイネージを組み合わせることで、新たな付加価値が提供できると考えました」

フライトビジョンの効果を検証する
実証実験を中部国際空港で実施

 フライトビジョンの本格展開に向けて、MDISは三菱電機情報技術総合研究所とデザイン研究所と共同で、同システムのコンセプトを検証する実証実験を中部国際空港で実施しました※③
 実証実験では、中部国際空港の「アクセスプラザ(空港の入口)」「国際線の検査場」「バゲージクレーム(預け荷物の返却場)」の3ヵ所にカメラ付きのデジタルサイネージを設置しました。そこで利用シーンに応じた情報を時間帯に合わせて表示することで、空港利用者の認知効果を検証しました。
 官公・航空システム事業部 航空システム営業部 部長の角 正徳氏はこの実証実験について次のように語ります。
 「三菱電機には、電車のドア付近に設置した液晶ディスプレイに電車の運行情報と広告を表示する『トレインビジョン』を開発した実績があります。この実績と考え方を空港に適用して、運航情報やゲートの混雑状況などの情報と広告を併せて提供したデジタルサイネージが、どのように認識されているか検証しました」

企画立案から具体的推進まで
ワンストップで提供し、様々な効果を創出

 空港利用者に実施したアンケート結果によると、運航情報を確認するなかで「広告」に気づいた人が、直接「広告」に気づいた人の約2.6倍に達する結果が得られました。また、空港利用者の興味を引き出すアイキャッチコンテンツの効果もあり、広告内容まで記憶している人は、全体の27.1%に及びました。
 航空システム営業部 航空システムエキスパートの高梨 郁子氏は「利用者が慌ただしく移動しているアクセスプラザでも『知りたい情報』と『気になる広告』を効果的に組み合わせて表示することで、広告効果が高くなることを確認しました。」と語ります。MDISが特許を保有する広告表示技術と連動することで、さらなる効果創出が期待できます。
 アクセスプラザ(上図左部分参照)では、52V型ディスプレイを3台設置。左面に運航情報、中面には航空機の遅延やカメラ検知による検査場の混雑状況を知らせるリアルタイム情報、右面に広告を表示しました。
 「混雑時間帯のお知らせや季節に応じたコンテンツ、または連休に空港が主催する音楽イベントの告知など、3面すべてを使ったアイキャッチコンテンツは、空港利用者から大きな反響が得られました。また、期間限定の広告を適宜配信する『メール入稿』が有効に機能しました。これは、広告主が文面と写真をメールで送信することで、迅速かつ柔軟な広告配信を実現するものです。天候や運航状況に応じてタイムセールなどの告知が随時行えることから、レストランや物販などの商業施設にとって利便性が高いとの評価が得られています」(高梨氏)
 検査場では、セキュリティー強化に伴って増加している手荷物制限事項のポスターの代わりに、直感的な伝達力を備えたアニメーションによって注意を促しました(上図右上部分参照)。その結果、告知効果の向上とともに、アニメの癒し効果による待たされ感を緩和する効果もあげています。
 また、滞留時間が長いバゲージクレーム(上図右下部分参照)では、到着客にとって関心が高い電車の時刻表や手荷物返却時間をご案内しました。併せて、疲れを癒すことができる展望風呂の割引案内を表示したところ、予想以上の利用者増につながりました。将来的には、利用者自身が情報端末でクーポンを取得するといったインタラクティブ広告の展開も想定されています。
 「こうした旅客動線や利用シーンを考慮したコンテンツからハードウェアの導入、システムのインテグレーションまで、ワンストップで提供できるのが三菱電機グループの強みです。条件が異なる複数の場所で実施した今回の実験で、動線上でのアイキャッチ効果に関するノウハウも新たに蓄積できたので、この成果を踏まえソリューションを展開していきます」(高梨氏)

フライトビジョンの提供範囲を拡大し
空港サービスのさらなる向上を支援

 2011年3月11日に発生した東日本大震災以降、非常時に不特定多数の人に安全・安心に関する情報を迅速に伝達するニーズが急速に高まっています。その回答の1つが、多言語で、一斉に情報配信ができるデジタルサイネージです。角氏は「フライトビジョンは平常時における運航情報やゲート混雑状況や広告だけでなく、緊急時にお客様を安全に誘導するための情報を提供することも可能です」と強調します。
 今回の実証実験の成果とノウハウは、空港にとどまらず、さらに広範囲で活用できることも確認できました。
 村田氏は「例えば、空港と近隣の駅の情報を連携することで、利用者にさらなる有用な情報を提供することができ、空港の付加価値を高めることができます。これからも三菱電機グループのノウハウ・テクノロジーを共有しながら、空港関係者と利用者に役立つサービスを提供していきます」と語ります。

※①「フライトビジョン」は三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社の登録商標です。
※②「フライトビジョン」は関連特許を複数取得しています。
※③ 本実験の一部は、三菱電機が総務省から委託を受けて実施したユビキタス空間情報基盤技術の研究開発の一環で実施したものです。情報技術総合研究所は実験全体のとりまとめと基盤技術開発を実施し、MDISはデザイン研究所とともに、中部国際空港様における実験の企画立案をはじめとした具体的推進を担当しました。

実証実験で使用したイメージ