2007年05月11日

顧客預金の着服など、職員の不祥事の発生はなかなか減っていないように感じます。判明した金融機関においては、当局報告や業務改善命令を通じて再発防止策に取り組んでいるようですが、色々と打ち出されている再発防止策は果たして発生原因を掘り下げて分析した上での効果的なものとなっているでしょうか?

例えば、何らかの事情により多重債務者となった渉外担当職員が、自分の借金返済のため、顧客から定期預金作成のためにそのまま預かった現金を着服し、発覚を防ぐため預金証書を偽造して自ら顧客に交付していたとの事例を想定してみます。

この場合、再発防止として、例えば、預り証を発行せずに現金預りを行ったり自ら預金証書を交付するという異例事務についての厳正化、また、支店長による職員面談等による生活状況の把握、多重債務者のカウンセリング、職員のコンプライアンス・マインド向上のための研修、内部監査機能の強化などといったことが考えられるのでしょう。

これらの施策の有効性を否定するつもりはありません。ただ、根本原因として、不祥事を起こした職員が、なぜ、職場や上司・同僚等に迷惑をかけてまでも犯罪行為に及んでしまうのか、その心理状況を踏まえた防止策を採る必要はありませんでしょうか?また、犯罪が実際に行え、かつ、それが容易に発覚しないような職場環境も、そのような行為に及んでしまう原因でないでしょうか?

言い換えれば、前者は職員の上司や職場に対する忠誠心や信頼感の不足、また、後者は、一義的には上司・同僚など職場の“目”の問題であります。つまり、職員が職場や上司に満足して信頼しているのであれば、大きな迷惑を掛ける行為にはやはり相当の躊躇を覚えるでしょし、また、職場や上司が職員の生活状況の問題や相談を積極的に受け入れる姿勢を常日頃より明示しているのであれば、犯罪行為に及ぶ前に(恥をしのんでも)相談を行う蓋然性は高まると思います。また、投入資源的にも限界のある部監査機能の強化より、日常的な上司部下・同僚間のコミュニケーション(モニタリング)を含む、他人の目が行き届く職場であればあるほど、発生ゼロはそれでも困難であるにせよ、犯罪の抑止力は高まり、万が一でも発覚は早まると思います。

回りくどくなってしまいましたが、要するに、従業員満足(ES←給料を上げろと言っているわけではありません)や現場でのむしろカジュアルなコミュニケーションの向上、という、ごくごく当たり前、しかし根本的な事項の改善・向上にまずは取り組まなければならないのではないでしょうか?これらに目をつぶったまま、異例事務の厳正化・カウンセリング窓口の設置・職員面談・研修など、いわば派生的で総花的な改善策(数が多ければいいってものではありません)を“徹底する”といってみたところで、カラ手形になるどころか、管理業務の増大によりかえって忠誠心やコミュニケーションを低下・阻害することにはなりはしないか、と金融機関のHPでの公表文書を読んだり、話を伺ったりしてやや気になっています。私としましては、数は少なくとも、根本的原因に対応した骨太で実効性のある施策を期待しているのですが。。。

金商法とかについても、まだ個人的に気になるところがあるのですが、それはまた追々と(こちらもカラ手形にならないようにしないと…)。

この記事へのコメント
初めて、コメントさせていただきます。TOSHI先生のブログでは、コンプライアンス・プロフェショナルの名でよくコメントをつけさせていただいているのですが、先生のブログは存じ上げておりましたが、金融ネタが多く難しくてコメントできませんでした。そちらの分野では素人ですので、コメントの内容についても、素人の戯言として流していただければと思います。

先生のご指摘の通り、私も内部統制やリスクマネジンメントの体制構築に際しては、ソフト面とハード面両面からの整備が不可欠であると考えております。世間でのリスク・コントロールの例などを見ると、往々にして、ハード面ばかりの対策に重点が置かれがちですが、組織が人の手段である以上、心理学的配慮やコミュニケーションの面は決しておろそかに出来ないと思います。

企業不祥事においては、社内のコミュニケーション不足や心理的な部署間の葛藤等で、必要な情報が適切に伝わらず(また伝えられず)に、おおきな問題となってから顕在化するケースが多いと思います。社内での落とし込みが不足しているケースも多く、知っているはず、いちいち指摘しなくても自分で対処すべき等の暗黙の前提が出来上がり、結局のところ、それが仕組みとして出来上がったハード面(規程やルールなど)を形骸化させるケースが比較的多いように思います。

ロスについては、計数的なものばかりに目が行きがちですが、モラルやモチベーションなど社員の心理的な部分に対するケアや配慮・着目なくして、真の内部統制やリスクマネジメントの構築はありえないのではないかと考えております。

非常に稚拙なコメントで申し訳ございませんが、またコメントできる内容のときに、コメントさせていただこうかと考えております。

Posted by コンプロ at 2007年05月15日 14:15
ご丁寧にありがとうございます。コンプライアンス・プロフェッショナルさんのコメントは、Toshi先生のブログで私もいつも興味深く拝読し、勉強させていただいています。
バックグラウンド上、どうしても金融業界ネタに偏ってしまうのですが、他の業界、とくに内部統制関係のお仕事をされている方々のお話をしていますと、業務内容や業法は異なっても、おっしゃるように、同様の課題を抱えて悩んでいらっしゃるのだなー、と実感しています。
従業員満足は、CSRはもとより内部統制の土台である、と本気で思っています。(マスコミなどからは怒られるかも知れませんが)巷で、「銀行は収益を預金者に還元を」みたいなことも言われますが、リストラで正社員も減少しているなか激務をこなしてきた社員にまずは還元をするのが、最終的には預金者への還元(CS)になるんじゃないかな、と私は考えております(確かに、バブル期にリスク管理不在だったツケと言えばツケなのですが…)。
これからも、どうぞ、お気軽に(辛口でも)コメントください。
Posted by Name at 2007年05月15日 20:53
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