阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

「LIXIL藤森」の墜落5――広報部の狂った回答

前回の続きだが、本誌はジョウユウの不正会計について「中立的な立場」から調査・検証したという特別調査委員会の川口勉・委員長(LIXIL社外取締役、公認会計士)宛ての質問状を作成し、LIXIL広報部に取り次ぎを求めた。すると驚いたことに、こちらが頼んでもいないのに、広報部が川口に代わって勝手に回答を寄こしてきた。下がその全文だ。

*   *   *   *   *

川口勉・社外取締役への質問状に対するLIXIL広報部の回答

川口取締役へのご質問につきまして、お取次ぎさせていただきました。特別調査委員会の委員長の立場であられた方として、外部からのお問い合わせには「ノーコメント」でいらしゃいます。そこでLIXILからご質問に回答させていただきたく存じます。

<質問>1.先生はJoyou 問題委員会の委員長として、報告書の非開示に同意されたのでしょうか?(同意・非同意のいずれでも、理由とともにご回答ください)

<回答>報告書の開示の如何については、取締役会で決定がなされました。取締役会の運営方針にもとづき、取締役会での個々の同意・非同意について開示はいたしかねます。また、当社が既に実施し、またはこれから行う訴訟等の結果により会社の利益が左右されます。当社が調査したことの全文公開は訴訟等の相手方を利する可能性があり、ステークホルダーの不利益を拡大するおそれがあります。よって、全文公開はいたしません。

<質問>2.日本弁護士連合会の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」は、第三者委の役割について「すべてのステークホルダーのために調査を実施し、その結果をステークホルダーに公表することで、最終的には企業等の信頼と持続可能性を回復することを目的とする」と定義しています。Joyou 問題委員会はこの役割を十分果たしたとお考えですか?(肯定・否定のいずれでも、理由とともにご回答ください)

<回答>Joyou問題委員会は、取締役会の下に組織されたもので、川口氏と外部専門家から成る委員会です。よって、日本弁護士連合会のガイドラインの影響を受ける第三者委員会とは性質が異なるものです。しかし、調査は客観的かつ中立的な立場から実施され、対象は極めて広範にわたるものであり、十分にその役割を果たすものであったと考えております。

*   *   *   *   *

いかがだろうか。狂っていると思いませんか?

最初の質問への回答では、特別調査委の報告書の非開示を「取締役会で決定した」と明かし、全文を公表すれば「訴訟等の相手方を利する可能性があり、ステークホルダーの不利益を拡大する」などと白々しい言い訳をしている。本当は特別調査委の報告書のなかに、LIXIL経営陣にとって「不都合な真実」が記載されていたのではないのか。仮に真相を隠して訴訟に勝ったとしても、660億円もの巨額損失を埋めるにはほど遠い。それより、高給を食みながら自己の誤りを認めず、保身に走ることしか能のないウソつき経営陣を温存する方が、ステークホルダーの不利益ははるかに大きい。

2番目の質問への回答はさらに酷い。特別調査委は「取締役会の下に組織」された“御用委員会”であり、最初から経営陣の意向で報告書を握り潰せるようになっていたなんて、これが初耳である。特別調査委の設置を発表した6月8日付IR(投資家向け広報)にも、わずか700字余りの調査結果の概要を発表した11月16日付の噴飯もののIRにも、さらに有価証券報告書やその他の公表資料をみても、そんなことはひとことも書かれていない。

そのうえ、「(特別調査委は)日本弁護士連合会のガイドラインの影響を受ける第三者委員会とは性質が異なる」などと、よくもまあしゃあしゃあと言えたものだ。調査委員の1人の中村直人氏は、企業法務の分野で第一人者の呼び声が高い著名弁護士だが、これでは中村氏は日弁連のガイドラインを平気で無視する「企業に甘い弁護士」だとLIXILが貶めているに等しい。

この回答を中村氏が読んだらどう思うだろうか。彼は本誌の質問状に返事すらしなかったから、本当にLIXILとグルだった可能性もある。しかし腑に落ちないのは、中村氏が東京証券代行のウェブサイトに連載しているコラムで、4年前に第三者委についてこう書いていることだ。少し長いが引用しよう。

第三者委員会には限界もあります。何を調査するか、いかなる事項について報告をするかということも委託者との合意で決まりますし、どこまで強制的な調査権があるかといえばすべて任意の調査しかできません。関係者が嘘をつけばそれを嘘だと立証することはかなり困難です。またいかなる判断基準で判断をするのかということも法的には決まっていません。裁判所における立証と同じ程度なのか、それよりも緩くて良いのか、各委員会の判断になります。また報告書の利用者は、すべてのステーク・ホールダーであり、広く世間一般といって良いのですが、しかし委託者はその不祥事を起こした会社であり、報酬も会社から支払われます。そこに根本的なねじれの問題があります。そのため委託者に迎合的になるのではないかというリスクは常について回りますし、不祥事が起きたときだけ第三者委員会を立ち上げて中間報告だけして、ほとぼりが冷めたら最終報告はしないで放置するなどといったケースもあるようです。依頼する側も、言うなりの意見を書くものと思って、たんに世間の批判をかわすためとか、権威付けのために利用しようと考える輩もいるようです。そのような場合には、たんなる「隠れ蓑」に使われてしまいます。そんなものなら、ない方がマシです。

また、中村氏は2013年に住宅メーカーのタマホームが設置した第三者委員会の委員長を引き受け、同社の子会社で発覚した不正会計の調査にあたった。その調査報告書は、創業トップを含む親会社の経営陣が善管注意義務を怠った可能性を明確に指摘するなど、第三者委の高い独立性を示す「お手本」として専門家の間で高く評価されている。ちなみにタマホームの第三者委のメンバーには、やはりLIXILの特別調査委の委員を務めた高岡氏も入っていた。

そんな中村氏や高岡氏が、わざわざ自分のキャリアに泥を塗るような真似をするとは考えにくい。このこともまた、特別調査委の報告書にLIXIL経営陣にとって「不都合な真実」が記載されていた可能性を強く示唆している。

藤森社長のクビが飛ぼうが飛ぶまいが、調査報告書の隠蔽というLIXILの暴挙を許したままでは、日本の資本市場の信用は落ちる一方だ。中村氏と高岡氏にプロとしての良心があるなら、すべてのステークホルダーのために沈黙を破るべきではないのか。