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その6:不祥事発覚時における広報対応
(4)危機発生の「七つの直」を実践しよう part.3

2016年01月26日

■5.衆知で「直作」

前回前々回に続き、今回は危機発生の「七つの直」の5.「直作」=危機発生時の作成物について見ていきたい。


●何を作成すべきか? と一連の流れ

直ちに作成しなければならないものは、次に挙げるもので、危機対策本部の機能とその活動の一連のプロセスフローは図―3の通りである。

 (1)情報マスター(あらゆる情報をここに集約する)
 (2)ポジションペーパー(整理・分析して時系列的にまとめる)
 (3)公式見解=プレスリリース(内外に発信する公式メッセージ)
 (4)想定問答集(Q&A)(プレスリリースに記述しない項目を網羅)
 (5)冒頭ステートメント(必要に応じて、発表者が最初に述べるお詫び・挨拶文)
 (6)諸資料(会社概要、ファクトブック、写真、イラスト、技術解説等々)


危機発生の第一報から直ちに危機対策本部立ち上げた後、集まってくる情報内容をポストイットに簡潔にまとめ壁に張る、白板に書く、パソコンに入力する等で(1)「情報マスター」を積み上げていくのであるが、一概に情報といっても、各部から均一な情報が、同じタイミングで集まってくれるか?が問題だ。

情報は出す人によって、スピード、タイミング、重要性の3つの感覚が異なる。さらに立場により"保身"の心に左右されて、スピードの遅延、タイミングのずれ、情報品質の劣化という現象がときには露呈することに留意すべきである。

そうして集めた確認情報や未確認情報を時系列的に整理し(2)「ポジションペーパー」を作成。

衆知を結集して直ちに会社としての「公式見解」つまり(3)「プレスリリース」にまとめるのである。

その判断に、会社の倫理観や道徳観が如実に表れる。

会社のビジョンや行動規範に則って、
"To be good"=いかに善くあるべきか! いかにビジョンに沿っているか!
を判断の根幹に置かなければならない。人間として、会社としての有り方の問題だからである。

それに書かない・書けないことは(4)想定問答集、つまり「Q&A」に網羅する。最終的にトップのオーソライズ(承認)を経て、経営幹部や各部に徹底を図り、全社統一した言動を行うのである。

もし、記者会見を行う場合には、(5)「冒頭ステートメント」も用意するとベター。そして、記者が原稿を書く際に必要な(6)「諸資料」を準備する。その資料の品質に会社の親切心や誠実さが顕れる。

そして、広報がメディアを通じて社会に直報する歩調に合わせ、各部は担当の関係者に対して、それぞれ適切・タイムリーに直報することが全社的に行うべき行動である。

プレスリリースとQ&Aは、「広報部」で原案を作成し、「対策本部」で修正・調整して作成した上申案を経営幹部―トップに上げ、会社として公式見解として最終承認を得て、関係幹部や部署に徹底する。これが一連の流れである。必要に応じて法律家(Legal Check)や公認会計士等専門家のチェックを忘れない。


「あなたのやろうとすることが、あなたの生きる使命・天命であるならば、そのような意味のある偶然の一致、いわゆるシンクロニシティ(共時性)が頻繁に生じます」(佐藤康行『ダイヤモンド・セルフ』)


●プレスリリース作成のコツ

危機に際してのプレスリリースの基本形は、図―4の通りである。
 (1)タイトル:直面した危機のテーマを端的に表現
 (2)リード文:冒頭に起こしたことに対する詫び+危機の現状を簡潔に
 (3)本文:伝えたい・伝えるべき内容を箇条書きに

特に(3)に挙げた15項目は、記者や社会の人達の関心が高い項目で必ず質問される可能性がある。このうち、どの項目をプレスリリースに記述し、それ以外をQ&Aでどんな表現で答えるかを決定しなければならない。ここが最も重要なポイントで会社の姿勢が現れる。

プレスリリース作成のコツは、
「簡(かん)、豊(ぽう)、短(たん)、薄(ぱく)、情(じょう)込(こ)めて」

 ・簡: 間違ってはならない・伝えたい・書いてもらいたい数字や表現を網羅。
     「プレスリリースへの記載は最小限にしQ&Aで対応すればよい」は完全に間違い!
 ・短: 多量のことを少量の言葉に収めよ。一文も短く一行も短く。「箇条書き」を多用
 ・薄: 1枚から3枚程度。網羅すべきは網羅しつつ枚数を減らす
 ・情込めて: 情熱・熱意を持って記述。「今後の方針」「見通し」を明記


そして、イラスト・グラフ・写真・図表等を使って、できるだけ視覚的にして「読んで判る<見て判る」ように記述すること!

一般的な文章の書き方は「5W1H」だが、ビジネスでは不十分。

「6W5H」とし、5Wに+Whom(誰に・誰を)を加え、1Hには、How much(売上高・単価・損害額等)、How many(売上数量、生産数量、損害数等)、How long(何時から何時まで、何時までに)、How in the future(今後の方針、再発防止策等)を追加。

これらは必ず質問が出るので網羅しておかなければならない。



●Q&A作成のコツ

Q&A作成プロセスは、次の通りだ。
 (1)広報で粗方Q&Aを作成
 (2)関係各部に追加QとAを要請
 (3)各部から集まったQ&Aを調整、一本化して上申案作成
 (4)トップに上申し決済を仰ぐ
 (5)各部に配布徹底

"質問予測力"を駆使して「想定外のQを無くす!」ことがその要諦である。多様な観点、広い切り口、深い視点からQを増やそう。

そのために、a)「テーマ別」(生産、品質、技術等)に、b)部署別(企画部、人事部、営業部等)に考え、c)旬の話題に関連したQを想定、さらには、d)「6W5H」であらゆるQを網羅する必要がある。

Aは、各部からの異なった回答を調整し一本化して、語尾の表現に細心の注意を払いつつ、具体的な簡潔な言葉に収める。この表現にこの案件に対する会社の姿勢・有り方が露呈する。

メディアは社会の代表者として情報開示すべし!との大義名分で、何でも教えろ!と迫るが、「情報開示」はすべてをさらけ出すことではない。
個人でも「今言ってもいい情報、今は言いにくい情報、言いたくない情報」があるが、会社情報はもっと大量で複雑だ。そこで「今、言うべきこと」と「今は、まだ言うべきでないこと」を分けて―承認(オーソライズ)して徹底することだ。
これができていないから嘘を言わざるを得ない羽目に陥るのである。

Q&Aは、次の3つに分けよう。
 (1)「訊かれなくても、言うべきこと」(キーメッセージ。プレスリリースの内容)
 (2)「訊かれたら、言うべきこと」(ただし、(1)に近いものと"いやいやながら"がある)
 (3)「訊かれても、言えないこと」(さらに"今はまだ言えないこと"と"丸秘"とに分ける)


「何ぞ、ただ今の一念(いちねん)において、ただちにする事の甚(はなは)だかたき」(吉田兼好『徒然草』)

山見 博康