不祥事は必ずバレる!

更新日:2007年03月15日

司法ジャーナリスト  『Web司法ジャーナル』発行人 鷲見一雄
1937年生まれ。法律雑誌記者、衆議院議員(前東京高等検察庁検事長)岸本義廣・秘書、衆議院議員(人心一新党近代化連盟=福田派代表世話人)池田正之輔・情報担当アドバイザーなどを経てコンサルタント会社を設立。企業などへのコンプライアンス指導、司法ジャーナリストとしてオンライン情報誌『Web司法ジャーナル』を発行。ラジオ、週刊誌、夕刊紙などにコメントを掲載。
   

コンプライアンス経営が声高に問われているにもかかわらず、企業の不祥事が続いている。法務部門が強化されても社内にコンプライアンス意識が浸透していなければ、不祥事は繰り返されるだろう。インターネット時代、不祥事は必ずバレる。そして検察や警察、国税など当局を甘くみた経営はもはや通用しない、という現実を認識しなければならない。


検事総長訓辞「企業のルール違反は国民生活に大きな損害」

但木敬一(ただき・けいいち)検事総長は就任直後の06年9月13日、全国の検事長、検事正を集めた「検察長官会同」で、ライブドア事件や耐震強度偽装事件に触れ、「企業のルール違反は国民生活に大きな損害を及ぼす。厳正に対処し、自由で公正な経済活動が維持されるようにチェック機能を果たしていかなければならない」と訓示、企業不正の摘発に積極的な姿勢を示した。

その姿勢に基づいて検察は企業の姿勢について厳しい目を注いでいるのだが、日興コーディアル証券、その監査をやっていた「みすず監査法人」(旧中央青山監査法人)、大手ゼネコン、三洋電機、三菱UFJ銀行、不二家などコンプライアンス経営などどこ吹く風と認識しているような不祥事が相次いでいる。

とくにひどいと思われる日興、三菱UFJ銀行に若干ふれるが、本誌読者は検察、警察、国税、公取委、証券取引監視委員会、金融庁などを甘くみた経営は、いまは通用しないと認識すべきことを強調しておきたい。

周知のように日興は上場廃止かどうかで注目を集めている。同社は子会社による企業買収の際に、関連書類を偽造して利益の水増しを図った不正経理は、子会社の旧経営陣が関与した「組織ぐるみの不正」だった。事実関係を調べていた有識者による特別調査委員会がそう認定したのだから間違いなかろう。

いうまでもないが、証券会社は、株式会社が証券取引所に上場する際に、財務・経営情報の開示に関するルールなどについて指導や支援し、株式や債券などの有価証券取引所を通じ、資本市場の健全化にも責任をもつ。それなのにその役割を担う証券会社みずからが不正な会計処理をしたことは、証券市場全体の信頼を損ねる重大な背信行為と指摘せざるをえない。

法務部門が強化されてもコンプライアンス意識が欠如

金融庁は財団法人「飛鳥会」(大阪市)をめぐる業務上横領事件に関連して、三菱東京UFJ銀行に対して一部業務停止命令を出した。「飛鳥会」が暴力団との関係が指摘されていたにもかかわらず、歴代の経営陣が約30年間も内部規定に違反した取り引きを黙認してきたとして、厳しい行政処分となった。事件への対応が遅れた背景には、飛鳥会との取り引きが旧三和銀行の時代にはじまったこともあるようだ。

筆者は日興を1985年から98年まで観察してきた。この間、三菱重工の転換社債問題、大喪の礼のとき噴出した疑惑ゴルフ場会員資格保証金預かり証問題、日興を窓口にした東急電鉄株買い占め事件、野村證券と並んでトップの国会喚問、小池隆一事件、常務・総務部長らと新井将敬代議士の事件などが発生した。三和についても85年頃から98年頃まで付き合いがあった。

その頃の日興、三和を忌憚なく批評させてもらえば、経営トップはじめ中間管理職までの多くにコンプライアンス意識欠如がみられた企業の代表格ということだ。

コンプライアンス経営が当たり前の経営となった今日、法務部門を強化しても、依然として悪弊を引きずり、トップや中間管理職にコンプライアンス意識が欠如していたのでは、不祥事が繰り返されて当然である。

山一證券が消滅し、日興が証券会社のあるべき姿から大きく乖離し危機に瀕しているのも、三菱東京UFJ銀行が三和の悪弊を改善できず、企業向け新規融資の1週間停止にまで踏み込んだ処分を受けたのも、経営トップはじめ中間管理職まで多くにコンプライアンス意識欠如がみられることによる。

インターネット時代にバレない不祥事はない

ところで、第一生命が公募している「サラリーマン川柳」に、「不祥事は、増えたのではなく、バレたのよ」という句があったと聞くが、その通りである。インターネット時代のいまはバレない不祥事はないと経営者は認識しないと臍を噛む。

法務部門は広報と並んで企業の表と裏の顔を狙っている。企業が法令順守、社会的規範や企業倫理を守り、不祥事を出すか出さぬかは法務部門の双肩にかかるが、まだ、上場、非上場を問わず半数の企業には問題があるのではないか。

不祥事を出さないためには何よりもまず企業の社会的責任について、上下一体となってじっくり考えるべきだ。企業の認識の甘さは許される時代ではないからだ。そのうえで法令順守体制を強化し、不正は断固やらないという経営陣を含めた企業全体の意思統一が必要だ。それができなければ不祥事はなくならないし、社員教育もアルバイト教育もできるはずはない。

最後に、捜査当局は企業と反社会的勢力との関係に厳しいということを認識しておかなければならない。銀行は旧第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)の総会屋への利益供与事件をきっかけに大きな批判が起こり、各行とも関係を断ち切ったはずだった。それが、実際にはそうした勢力との不適切な関係が続いていることが、今回の三菱東京UFJ銀行の事例で明らかになった。事件の教訓は生かされなかったといっていい。

「攻めの経営」もいいが、その前に内部の管理体制に不備はないのか、しっかり点検することも重要なことと認識すべきである。検察、警察などに眼をつけられたら生き残るのが難しい時代であるからだ。