2008年01月10日 

環境ビジネス最前線 企業不祥事に見る食品業界のビジネス動向 1 / 3

企業不祥事に見る食品業界のビジネス動向  1/3

(NTTデータ経営研究所  社会・環境戦略コンサルティング本部
シニアコンサルタント  石川 賢)
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<概要>

  相次ぐ食品偽装問題等を契機として、"コンプライアンス(法令遵守)"や"リスクマネジメント(危機管理)"が改めて注目を集めている。本稿では、形骸化されない"コンプライアンス(法令遵守)"及び"リスクマネジメント(危機管理)"の在り方を探る。

<関連キーワード>
  食品偽装、コンプライアンス、リスクマネジメント、CSR
<企業>
  雪印食品、雪印乳業、ミスタードーナッツ、日本食品、
  日本ハム、ハンナン、不二家、ミートホープ、
  石屋製菓、原田穂積、石橋淡水、比内鶏、
  赤福、船場吉兆、博多っ子本舗

1-1.社会現象となった食品偽装

  その年の世相を漢字一文字で形容する"今年の漢字"が、漢字の日である12月12日に京都清水寺にて公表された。記憶に新しい2007年の漢字は、食品偽装に代表される『偽』が選出された。一連の食品偽装では、当該企業の経営陣が無数のフラッシュを浴びマスコミ対応する様が新聞、ニュースにて取り上げられた。多くの記者会見では、自社の過失をひたすら謝罪する経営陣という光景が定番となった感がある。中には、不祥事の謝罪会見であるにも関わらず、この期に及んで過失を認めない経営陣や、カンニングペーパー棒読みで気持ちの入っていない謝罪など、不祥事の当事者である企業が危機感を持っているのだろうか?と疑念を持ってしまうものもあった。
  不祥事を起こす企業において共通する点は、企業として法令遵守(コンプライアンス)と適切な危機管理(リスクマネジメント)が機能していないということである。本稿では、CSRの要であり、食品偽装等を契機として改めて注目が高まっている"コンプライアンス"および"リスクマネジメント"について、これまでの食品業界に見る不祥事やその後の対応を踏まえ、今後、食品業界に求められる理想のコンプライアンスの在り方を検証する。


1-2.コンプライアンスとは?

  まずコンプライアンスとは何かを確認したい。"コンプライアンス"とは、企業における倫理と法令を遵守するための理想や理念を簡潔にまとめたものであり、役員、社員の日々の思考、行動の拠り所ということができる。しかし、不祥事を起こした多くの企業において、このコンプライアンスが形骸化している。


1-3.形骸化されるコンプライアンス

  企業は日々危機(リスク)にさらされており、不測の事態や一部の不道徳な社員により予期せぬ問題を抱えることもしばしばである。そのため理想だけを掲げたコンプライアンス、または不祥事の発生を前提としない危機管理(リスクマネジメント)によって、企業を健全に保つことは難しい。

図1  「タテマエ」としてのコンプライアンスを実施した場合の悪循環
(出典:なぜ企業不祥事は、なくならないのか(國広正/五味祐子、日本経済新聞社))

  図1は、不祥事を起こす企業に有りがちなコンプライアンスをタテマエだけで実施することで、結果的に容易には抜け出せない不祥事の悪循環に陥るサイクルを示している。このサイクルに該当する企業は、コンプライアンスを取り敢えず実施しているだけであり、経営者においてはコンプライアンスの本質を理解せず費用面でも最小限の支出に留めることを優先してしまう。そのため、機能するはずのコンプライアンスを基軸としたリスクマネジメントの効果は発現せず、容易に不祥事を引き起こし、更に損害を最小限に食い止める対策を講じることも受動的な対応に陥ってしまう。タテマエとしてコンプライアンスを実施し、タテマエのお詫びで対処する企業には、コンプライアンスを基礎とした企業体質は定着せず、不祥事の際に後手後手の対応に迫られ、悪循環の道を辿るのである。コンプライアンス無しの企業経営は、海図を持たずして大海に船を出すようなものである。


1-4.リスクマネジメントの基軸となるコンプライアンス

  営利を追求し、社会に貢献する使命を負っている企業は、企業倫理に反する不祥事を起こすことは絶対に許されない。しかしながら、実際のところ、企業行動に伴う過失は大なり小なり発生する。企業は過失を前提とした、<1>予防策としてのコンプライアンス、又は<2>対応策としてのコンプライアンスを常に念頭に置く必要がある。日々の業務において、過失予防におけるコンプライアンス(<1>)に基づいた社員の意見を汲み取る企業の体制を構築することが必要である。そして、不幸にも企業が不祥事を起こした場合、コンプライアンスに基づいたリスクマネジメント(<2>)を実施することが必要である。これらの場合において重要なことは、どのような時も社員が容易に理解でき、行動し易いコンプライアンスを制定することである。
  過失が生じた場合、多くの企業では全ての業務が停止し、冷静な価値判断がつけられない錯乱状態に見舞われる。このような場合、日常的なコンプライアンスが適切な社員の行動とリスクマネジメントを後押しすることとなる。分かりづらいコンプライアンスや行動しづらいリスクマネジメントは、無意味である。企業による迅速かつ的確な対応が、事故や過失の拡大を最小限に食い止めることとなり、傾きかけた企業をいち早く立て直す特効薬となるのである。

  食品偽装に代表される企業不祥事は、絶対に許されるべきものではない。しかしながら、企業は社員だけでなく、その家族や消費者など多くのステークホルダーを抱える存在であり、"過失=社会からの退場(倒産)"と簡単に結論づけられるものではない。
  過失を犯した企業は自浄活動により、過失への責任を全うし、いち早く軌道修正、又は体質改善を行うことが重要である。次項以降にて、食品偽装を起こした企業の事例をもとに、不祥事後の対応の面から見たコンプライアンスへの取り組みを検証する。

<引用文献>
  • なぜ企業不祥事は、なくならないのか(國広正/五味祐子、日本経済新聞社)
  • 雪印乳業  活動報告書2007(雪印乳業)