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懲戒解雇


私、小松秀樹は、2015年9月25日、懲戒委員会での形ばかりの弁明の後、即日、亀田総合病院を経営する医療法人鉄蕉会から懲戒解雇を通告された。解雇予告通知なしに解雇することは、労働基準法20条違反である。弁明の機会付与通知書には「手段の如何を問わず、厚生労働省及び千葉県に対する一切の非難行為を厳に慎むことを命じます」と日本国憲法の下ではありえない文言が記載されていた。

安房10万人計画


懲戒解雇の3年6か月前、2012年3月、私は、安房地域の人口減少への対応策として、医療・介護によるまちづくりビジョン「安房10万人計画」を提唱した。安房地域に首都圏から高齢者を迎えて、楽しく穏やかな余生を過ごしてもらうことと、それによる雇用創出が目的だった。以後、インフラ整備のための活動を行ってきた。

安房地域医療センターでの無料・低額診療開始、民間公益活動へのふるさと納税利用の制度化、社会人に安定した雇用を提供するための看護学校創設、看護学生寮への高齢者向け住宅併設、高齢者の人生の重要な決定を支えるワンストップ相談サービスの事業化などである。こども園を中心とした複合組織による子育て支援(必要時夜間保育、病児保育、学童保育、母子家庭・父子家庭支援)の準備も進めつつあった。安房10万人計画のハブとして特定非営利活動法人ソシノフを設立した。

亀田総合病院地域医療学講座


2013年9月、亀田信介院長から、亀田総合病院地域医療学講座の話が持ち込まれた。「2013年度から3年間で、地域医療再生臨時特例交付金から5400万円の予算が出ることになった。何をするのか前提を捨てて考えてほしい」と依頼された。私は地域医療学講座の活動を安房10万人計画に組み込むことにした。地域で魅力的な取り組みをしていることを全国に発信することで、医療人材確保策としたいと考えた。ソシノフの活動の一部を地域医療学講座が担当する形になった。

21世紀に入り、ケアについての社会の要請が、医学的な治癒をめざす医学モデルから、患者の生活の質を高める生活モデルに変化した。この変化に厚労省は「地域包括ケア」という言葉で対応しようとしている。医学モデルでは、病気の定義、診断、治療、治癒の概念を医師が提示する。生活モデルではニーズは明示されず、ニーズについての情報を様々なサービス提供者や周囲の人々が把握しなければならない。行政の上意下達のヒエラルキー構造だと、現場は上ばかり見ることになり、それぞれの現場でニーズを把握してサービスを向上させることが困難になる。

一方で、現場の個々のサービス提供者が認識と判断の主体になると、衝突や混乱が生じる。ソシノフでは、混乱を避けつつ、サービス水準を向上させるために、地域包括ケアについての非権力的な行動プログラム、すなわち、規格を作成しようと考えていた。規格に認証、契約、協定などが加わることで、予見可能な形でサービスが提示され、実行が担保される。規格が社会で認知・承認されるには、オープンな議論で改定されなければならない。

熟慮の末、地域医療学講座の活動内容を2つに絞った。1つは、地域包括ケアについての映像シリーズ作成とそのシナリオを書籍化することである。地域包括ケアは、完成型として提示されるべきものではない。継続的に議論し、発展させていくべきものである。すべての人々にとって切実なことなので、誰もが自分で地域包括ケアについて考えることができるよう、思考の枠組みと材料を提示することをめざした。

2つ目は、前に述べた地域包括ケアの規格作成である。2013年度後半から、映像シリーズ作成の準備を始めた。枠組みについてのコンセプトの明確化、プログラム作成、講師の選定を行った。2014年度はシナリオ作成と撮影を行った。2015年度は、映像と書籍の編集出版、規格作成を予定していた。

千葉県の虚偽通告


ところが、2015年5月1日、新任の千葉県健康福祉部医療整備課の高岡志帆課長と新田徹医師・看護師確保推進室長から、地域医療学講座の2014年度の補助金を1800万円から1500万円に削減する、2015年度の予算は打ち切りにすると告げられた。2015年3月30日付けの1800万円の交付決定通知(千葉県医指令2082号)が送付されてきていたにもかかわらずである。理由として、10分の5補助だったこと、予算がなくなったことをあげた。

地域医療再生基金管理運用要領には、「都道府県は、事業者から基金事業に係る助成金の申請を受けた場合には、審査を行い、当該申請の内容を適正と認める場合は、当該事業者に対し助成金の交付を行うものとする」「都道府県は、基金事業を中止し、又は終了する場合には、厚生労働大臣の承認を受けなければならない」と書かれている。不適切だと認められる場合を除いて、県の役人の恣意で、助成金の交付を拒むことはできないし、事業を中止することもできない。

通告は、虚偽によって予算削減を受け入れさせ、予算要求を阻止しようとしたものである。私は厳しく追及した。同席していた亀田隆明、省吾両氏も怒りを露わにして同調した。亀田隆明鉄蕉会理事長は、亀田総合病院から自治体病院に何人か支援医師を派遣していると発言し、引き揚げを示唆した。私は、高岡課長に対し、基金の使い道と残金を明らかにするよう求めた。

亀田隆明氏の豹変と千葉県の虚偽の破綻


この2週間後、亀田隆明理事長が態度を変え、私を千葉県との交渉から外して、理事長と高岡課長だけで交渉すると主張し始めた。私はそれまで事業内容について、県と何度も長時間にわたる協議を行い、合意を形成してきた。私を外せば交渉は成立しない。地域医療学講座は、外部の学者が関与する公費が投入された公益目的の学術活動である。プログラムディレクターである小松秀樹には、個別医療法人を超えた責任がすでに生じていた。

私は、亀田総合病院に勤務する弁護士と戦術を相談した。言論で叩いた上で、千葉県の提案に乗らず、当方の正当性を主張し続けて1か月ほど頑張れば、向こうから折れてくるというのが結論だった。そこで、経緯を「亀田総合病院地域医療学講座の苦難と千葉県の医療行政」(1 2 3)と題する文章にまとめて、メールマガジンMRICに投稿した。

5月27日、予想通り千葉県が折れてきた。高岡課長は、補助率が10分の10だったこと、交付金は残っており、出納局が管理していることを明らかにした。「2014年度は1800万円確保することができた」と語ったが、これは正確ではない。3月30日にすでに確保されていたのである。

一方で、2015年度の予算が認められるかどうか曖昧にした。これでは事業を実施できない。国で決まった基金の扱いとしては普通ではない。そこで、県を押し込むために「千葉県行政における虚偽の役割」をMRICに投稿。実名を含めて、出来事をできるだけ正確に再現した。

言論抑圧とまちづくり組織の破壊


6月22日、経営者の亀田信介、省吾両氏から内密で話があると呼ばれた。信介氏から、「厚労省関係から連絡があった。千葉県ではなく厚労省の関係者である。厚労省全体が前回のMRICの記事に対して怒っており、感情的になっていると言われた。記事を書くのを止めさせるように言われた。亀田総合病院にガバナンスがないと言われた。行政の批判を今後も書かせるようなことがあると、亀田の責任とみなす。そうなれば補助金が配分されなくなるとほのめかされた」と告げられた。

「亀田は私立病院であって、公立病院のように守られていない。4000人の従業員の雇用を守らないといけない。以後、千葉県の批判を止めてもらえないだろうか」と要請された。私は、「言論を抑えるというのはひどく危険なことである」「権限を持っていて、それを不適切に行使すれば非難されるのは当たり前だ」と主張し、いずれ社会に発信すると伝えた。議論内容を確定させるために信介氏に会話記録をメールで送ったが、修正を求められることはなかった。信介氏に対しては、大きな問題に発展するかもしれないので、連絡があった厚労省職員とは距離を置いて、接触しないよう忠告した。

この後、亀田隆明理事長は地域医療学講座とソシノフの活動を妨害し始めた。7月13日、ソシノフ代表理事の小松俊平に対し、「地域医療学講座がもめて、そこでソシノフの名前が出たことで、国も県もソシノフに拒否反応を示している。補助金が変に使われたのではないかと疑っている。1円もソシノフにいっていないとしても、このようになってしまった以上、鉄蕉会としても、亀田隆明個人としても、今後ソシノフのメンバーに加わることはできない」として、亀田隆明、省吾両氏がソシノフから脱退すると表明した。

さらに「地域医療学講座は鉄蕉会が県から委託された事業で、金は鉄蕉会が出している。地域医療学講座をソシノフと関係させるのはやめてほしい」と述べた。設立時の運営会員の内、2名がソシノフから離れ、医療法人鉄蕉会と学校法人鉄蕉館の協力が得られなくなった。亀田グループは、安房地域のまちづくりより、行政の機嫌をとることを優先した。行政の圧力によってまちづくり活動の枠組みが壊された。

このやり取りの内容を確定させるために、会話記録を添付したメールを亀田隆明理事長に送付した。隆明理事長は、修正を求めることなく、「信頼関係が重要な県等との協議について、外部者が閲覧できるメルマガ等に、その協議の内容を実名入りで投稿することは信義にもとる行為であり、当法人の幹部は行うべきではない。そのような行為がなされている状態を放置していると、ガバナンスの効いていない法人として評価が低くなり、補助金支給等の裁量の幅のある案件で不利な取扱いを受ける恐れがある」と返事してきた。

地域医療学講座とソシノフを関係させるなということは、DVDと書籍の出版を差し止めよということに他ならない。すでに、映像シリーズのDVD、書籍はソシノフが販売することで合意されていた。そもそも、医療法人鉄蕉会は出版を業務としていない。亀田隆明理事長は、映像についての契約書に捺印していた。この契約書は千葉県にも送付し、了承されていた。隆明理事長は自分が契約書に捺印したことを失念していたらしい。契約書の存在が伝わり、側近から契約書のコピーの提出を求められた。提出後、出版の妨害がなくなった。

2015年8月末、書籍『地域包括ケアの課題と未来-看取り方と看取られ方』(ロハスメディア)をやっと出版することができた。すべての基礎自治体、保健所などに配布する予定である。内容をソシノフのサイトに順次公開していく。いまどき、行政による出版妨害はめったにあることではない。是非、内容をご覧いただきたい。

井上肇結核感染症課課長


7月15日、経営者に近い人物から、第三者を介して、言論抑圧をしかけたのが厚労省の井上肇結核感染症課課長であると伝えられた。ぼんやりしていた像が鮮明になった。彼は以前より、行政が大きな権限を持つことを是とし、批判されることを極端に嫌っていた。東日本大震災当時、千葉県に在職していたが、亀田隆明理事長を通じて、私に行政批判を控えるよう言ってきたことがある。行政が民間の救援活動の障害になった事例をインタビューで紹介したことが、井上肇の逆鱗に触れたのである。

私は、行政による言論抑圧として記録を残すために、井上肇の名前こそ出さなかったが、「大規模災害時の医療・介護」で言及した。その後の議論で、彼は、東日本大震災時の行政の対応に問題があったことを認め、首相が保健・医療分野を指揮する「ツァー(皇帝)」を政府内に任命し、「ツァー」に強力な権限を与えて対策を進めていくべきだったと主張した。

強力な独占的権限は、機能しないとすべてが動かなくなり、暴走すると甚大な被害が生じる。東日本大震災では、首相官邸がすべてを仕切ろうとしたが、情報が集まりすぎて機能停止状態に陥った。私は、行政に頼るだけでなく、多くの目で観察して被害情報を共有し、対応可能な人や組織が自主的に動く民間ネットワークの活動を活かすべきだと反論した。

彼がインフルエンザの担当者になる前後、私との間で、メールによる長い議論があった。私は、2009年の新型インフルエンザ騒動当時、厚労省が、医療現場の実情を無視したアリバイ作りのための大量の事務連絡で医療現場を混乱させたこと、WHOが検疫を推奨しないと声明を出したにもかかわらず、科学的根拠を提示することなく、検疫や停留措置で人権を侵害したことなどを指摘した。

彼は、日本が世界のインフルエンザ対策を担うインナーサークルの一員であることは誇るべきことであり、インナーサークルの立場からは、科学的に意味がなくても、検疫を実施しなければならない、インナーサークルに所属して一生懸命やっているのだから、説明がなくても社会はこれを受け入れるべきであり、インナーサークルの状況を含めて全体像を知ることなく厚労省を批判するべきでないと主張した。

これでは、行政に対する批判を一切するなと言うに等しい。2009年のH1N1インフルエンザは病原性が弱く、日本の被害は少なかった。彼は、行政の努力の結果、被害を少なくできたと主張し、日本はワクチンを製造できる数少ない国の一つだと誇らしげに述べた。しかし、日本のワクチンに新型インフルエンザの発症を抑える効果がなかったことを示す明白な証拠があったこと(Human Vaccines 7:1,1-2,2011.) を知らなかった。スーパーコンピューターを使ったシミュレーションで、感染者の大半が検疫をすり抜けたと推定されたこと(Eurosurveillance:15(1):Article 4, 2010.)を知らなかった。

彼は、議論で追い込まれると、私に対する敵意を隠そうとしなくなった。私は以下のようにたしなめた。「批判されることにただ反発するだけでは、能力の欠如を示しているとしか受け取られません。」「行政が厳しい批判にさらされるのは、立憲主義をとる近代憲法の前提です。」「誠実な説明がなければ、厚労省が追い込まれるか、強権で抑え込むかになります。現状は後者ですが、いつまでも続けられるとは思いません。」

懲戒処分原因事実


行政による言論抑圧は看過できることではない。私は、知人の厚労省高官に作成途中の、調査と厳正対処を求める文書の原案を送って、手渡す窓口と日時を相談した。この文書が、千葉県に送られ、高岡医療整備課長から、9月2日11時18分、亀田隆明理事長に送られた。メールには「補足のご説明でお電話いたします」と書かれていた。この日、亀田総合病院経営管理本部であわただしい動きがあったこと、亀田隆明理事長が9月中に小松秀樹を懲戒解雇すると息巻いていたことを知人から伝えられた。

処分通知書の懲戒の原因事実は、「貴殿は、職務上及び管理上の指示命令に反し、亀田総合病院副院長の名において、厚生労働省に、2015年9月3日付け厚生労働大臣宛書面を提出し、同省職員の実名をあげ、調査と厳正対処を求める旨の申し入れを行った(懲戒処分原因事実3)」と締めくくられていた。公務員の不正について調査と対処を要請したことが、懲戒処分の理由として堂々と記載されていた。

刑事事件として扱うべき理由


亀田総合病院事件の本質は国家による言論の自由の抑圧である。千葉県の課長を含む複数の公務員が関与していたことから、井上肇の個人的不祥事とすることはできない。医療法人鉄蕉会は、行政の圧力の下に、懲戒処分を実施したものであり、懲戒をめぐる紛争は単なる私人間の紛争ではない。人権侵害をもたらしたプロセスは、行政と医療法人鉄蕉会の支配-被支配関係の中で生じており、小松秀樹と代理人は詳細を調査する方法を持たない。

本事件は、公務員による憲法と法治主義への組織的挑戦であり、国の根幹にかかわる。放置すると国を危うくする。事件では、刑事法に抵触する行動がいくつか認められた。調査権限を有する機関が本格的に調査し、刑事法をもって厳正に対処すべき事案である。

私は代理人と共に、検察と何度か協議を重ねた上で、告訴状、告発状を検察に対し提出した。検察はこれを受け付けた。検察による捜査が近いうちに開始されるはずである。厳正な捜査と判断を期待するものである。