千葉県警、隠蔽の背景…「旅行」の重み認識なく


長崎県ストーカー殺人事件の経緯

 対応の不備では済まされないストーカー殺人事件と、職員旅行の“隠蔽(いんぺい)”疑惑。警察の対応はなぜ、こんなにいいかげんなものになってしまったのか。背景を追う。

                   ◇

 真冬の北海道は朝から青空が広がっていた。昨年12月9日金曜日の函館市。男女12人の一行は市内観光を終え、登別温泉に向かう車中で揺られていた。ずいぶん前に日程を決めていた2泊3日の親睦旅行。年に1度、職場の緊張感から解放されるひとときだった。

 急に雲が広がった夕方、12人の勤務先の千葉県警習志野署では、長崎県西海(さいかい)市のストーカー殺人事件の筒井郷太容疑者(27)の事情聴取が行われていた。結局この日は逮捕は見送られるが、筒井容疑者の犯行を防ぐ最後の機会だったことを知る由もなかった。

 一連の対応の不手際を指摘された千葉県警など3県警は3月5日に公表した検証結果で、最悪の結果を招いた原因に「危機意識の不足」を挙げた。だが検証結果には親睦旅行の事実は一言も盛り込まれなかった。

 旅行に参加したのは、被害女性から相談を受けていた生活安全課長を班長とする当直班のメンバー。刑事課からも4人が参加し、女性に被害届の提出を「1週間待ってほしい」と伝えた課員もいた。

 検証作業に関わった千葉県警の幹部や担当者はその事実を知りながら、漫然と放置していた。旅行に行きたかったから1週間遅らせろと言ったのか。旅行に行った署員が残っていれば…。誰一人として、思いは至らなかった。

 ◆「話が合わない」

 親睦旅行の事実が明らかになった3月22日夜、筒井容疑者に殺害された山下久江さん(77)の兄、広瀬安夫さん(80)の西海市の自宅の電話が鳴った。相手は千葉県警の安達泉己(いずみ)生活安全総務課長(58)。検証結果を公表した際、謝罪した一人だ。

 「人が足らんから受け付けできないということだったじゃないか。話が合わん」

 「担当者2人は残しておきました」

 「5日の説明にはない。隠そうと思ったんじゃろ」

 「そういうわけではありません。直接事件とは関係ないので…。調べ直します」

 千葉県警の“失態”に、警察庁は検証経緯の調査を指示。県警は、最初の検証に加わった者を除外し、不祥事を調べる監察官室を中心にしたメンバーで再検証に乗り出した。遺族の不信感も最高潮に。3月26日には遺族らが千葉県警に、第三者による再調査を行うよう申し入れた。

 広瀬さんは「1週間待てと言われた理由が分からない。分からないと納得できない。警察が調べ直しても信用できない」と声を荒らげた後、つぶやいた。「こらえきれないよ。過去の教訓は生かされていないよ」

 ◆「危機意識欠如」

 千葉県警による再調査が進むにつれ、旅行の事実が“隠蔽(いんぺい)”された背景がぼんやりと見えてきた。

 関係者によると、生活安全部と刑事部の検証が始まった当初から、地元採用の鵜沢(うざわ)憲一生安部長(59)と刑事部ナンバー2の杉田義弘参事官(57)ら幹部だけでなく、検証に関わった関係者のほぼ全員が知っていたという。

 鵜沢生安部長や杉田参事官が、警察庁キャリアの鎌田聡本部長(55)や森末治刑事部長(43)に報告しなかった理由はまだ判然としていない。

 「署員の旅行は何か影響があったのか」

 「問題はありません」

 こうした報告が下から繰り返され、検証の実務を担当した刑事総務課も同じ意見を杉田参事官ら幹部に伝えたとされる。実際、安達生安総務課長が遺族に弁解したように、千葉県警内では今でも、「直接事件に関係ない」という意見が支配的だ。ことの重大さを認識できなかったとの見方が強まっている。

 警察庁幹部は「旅行の是非、捜査への影響は再検証の結果を待つ」としながら、「客観的に見て、『影響がない』と言われて『はいそうですね』という状況ではない」と言い切る。

 片桐裕(ゆたか)長官(60)は、旅行の事実が明らかになった22日、千葉県警の対応をこう指弾した。

 「危機意識が欠如していたことの表れではないか」

【用語解説】3県警による検証

 長崎県ストーカー殺人事件で逮捕された筒井郷太容疑者(27)が山下誠さん(58)の三女(23)にストーカー行為を繰り返していたことについて、事前に相談を受けていた千葉、三重、長崎の3県警が3月5日、捜査の経緯などをまとめ、公表した。重大事件に発展するという危機意識の不足▽ストーカー規制法による積極的な対応の未検討▽3県警の情報共有や連携、組織的な対応の不備-などの問題点を挙げた。


(産経ゴミ新聞 04/03 12:18)

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