CSR報告書の意味と意義

不祥事を起こしてしまった企業のCSR報告書って気になりませんか?

先週、東洋ゴムの不祥事(免震ゴムデータ偽装)の問題があり、CSR情報を見直した企業担当者も多いかと思います。CSR報告の中でガバナンスにも注力していると書かれているのですが、宣言だけしても実効性がないとなると…。なかなか難しい問題です。

「コーポレートガバナンス・コード」など、日本企業のガバナンスにおけるガイドラインが整ってきている現状をみると、来年のCSR報告書で何を書くのか、という部分が非常に気になります。

とはいうけど、大きな不祥事後のCSR報告書ってどう書いたら良いの?と思う方も多いはず。実は非常に参考になる事例があります。

不祥事の対処とCSR報告

過去の食品企業の不祥事

過去の食品関係の不祥事で思い出すのは、2001年に「食品偽装問題」を起こした雪印食品の件です。

当時は上場もしており老舗企業でした。ところが、親会社の雪印乳業(現・雪印メグミルク)も2000年夏に大規模な「食中毒事件」を起こしており、信用はガタ落ち。雪印食品は翌年の2002年に破綻してしまいました。また、2007年の不二家の「使用期限切れ食品問題」もあります。財務的に崖っぷちでしたが、早急にありとあらゆる手をうち、2年後の2009年には黒字決算をするまで回復しました。

そして、2013年末、マルハニチロのグループ会社である、株式会社アクリフーズ群馬工場において農薬混入事件が発生したのです。「想定していなかった」は顧客には関係ありません。

そして、2014年、マルハニチロはグループ社内体制の大変革、そして、ステークホルダーの信頼を取り戻すために、振り返りたくもない事件の全容をCSR報告書という形にまとめて情報開示をすることになりました。

マルハニチロの事例

2013年末、株式会社アクリフーズ群馬工場において農薬混入事件が発生し、マルハニチログループへの社会的信頼は大きく揺らぎました。マルハニチログループは、この事件の経緯や反省点、今後の対策をステークホルダーの皆さまにご報告することが、事件の当事者であるマルハニチログループの責任を果たすことにつながり、信頼回復の第一歩とすることができると考え、『マルハニチログループCSR報告書2014 特別版「アクリフーズ農薬混入事件」の記録。』として本冊子を発行しました。
CSR報告書2014(特別版)–「アクリフーズ農薬混入事件」の記録

もちろん、問題を起こしたことは評価させれるべきではありませんが、この積極的な情報開示は素晴らしいと思います。事件当時の監査フローや記者会見での不適切な情報開示等はありましたが、これで終わりにすることなく情報開示を行なう姿勢を保ち続けたことは中々勇気のいることです。

大なり小なり、不祥事はどの会社でも起きます。どんなに気をつけていても、いつか起きます。問題はその後のステークホルダー対応です。これこそが、リスクマネジメントの要訣なのかもしれません。

マルハニチロのCSR報告書でも触れられていますが、「危機管理の実践的なシミュレーションをしていなかった」という課題は非常に大きいです。最悪のリスクを想定し、事前準備をしておくこと。これで、事後対応も大きく変わったものと想像できます。

今回のCSR報告書には、CSR報告で重要なISO26000やGRIの対照表・ガイドライン表記はありません(去年の通常版もなかったみたい?)。ただステークホルダーが一番関心のある領域を集中的に情報開示することは情報ニーズに合った適切な開示とも言えるので、決して不備とは言えないでしょう。CSR報告書の作成方法・書き方の非常に良い事例です。

まとめ

企業の不祥事をCSR報告書でまとめる必要はないと思うのですが、「ガバナンスはちゃんとしてます!」って情報開示をしていた以上、説明責任を果たすという意味では開示すべきなのかもしれません。

大なり小なり不祥事はいつか発覚します。いつ外部に“バレる”のかはわかりませんが、いつか絶対バレます。火種が小さい時に、適切な謝罪と対応を迅速に。

この不祥事におけるCSR報告書は、その必要性・意義・意味を改めて問うものになったのかと思います。もしかしたら、不祥事におけるCSR報告書のトレンドというか傾向というかマイルストーン的なものなのかもしれません。

CSR活動において、企業のリスクマネジメントは“基本のき”です。予算がない、人がいない、と数十〜数百万円をケチって数百億レベルの損失を出す企業が減らないのはなぜなんでしょうね。というわけで、CSR報告書をただの冊子と思わず、その意味や意義を理解しステークホルダーへ情報開示をしていきましょう!



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