上場会社における不祥事対応のプリンシプル

プリンシプル策定の趣旨

上場会社には、株主をはじめ、顧客、取引先、従業員、地域社会など多様なステークホルダーが存在します。このため、上場会社の不祥事(重大な法令違反その他の不正・不適切な行為等)は、その影響が多方面にわたり、当該上場会社の企業価値の毀損はもちろんのこと、資本市場全体の信頼性にも影響を及ぼしかねません。したがって、上場会社においては、パブリックカンパニーとしての自覚を持ち、自社(グループ会社を含む)に関わる不祥事又はその疑いを察知した場合は、速やかにその事実関係や原因を徹底して解明し、その結果に基づいて確かな再発防止を図る必要があります。上場会社は、このような自浄作用を発揮することで、ステークホルダーの信頼を回復するとともに、企業価値の再生を確かなものとすることが強く求められていると言えます。

しかし、上場会社における不祥事対応の中には、一部に、原因究明や再発防止策が不十分であるケース、調査体制に十分な客観性や中立性が備わっていないケース、情報開示が迅速かつ的確に行われていないケースなども見受けられます。

このような認識の下、日本取引所自主規制法人として、不祥事に直面した上場会社に強く期待される対応や行動に関する原則(プリンシプル)を策定しました。このプリンシプルが、問題に直面した上場会社の速やかな信頼回復と確かな企業価値の再生に資することを期待するものです。

本プリンシプルの各原則は、従来からの上場会社の不祥事対応に概ね共通する視点をベースに、最近の事例も参考にしながら整理したものです。本来、不祥事への具体的な対応は各社の実情や不祥事の内容に即して行われるもので、すべての事案に関して一律の基準(ルール・ベース)によって規律することには馴染まないと言えます。他方、それらの対応策の根底にあるべき共通の行動原則があらかじめ明示されていることは、各上場会社がそれを個別の判断の拠り所とできるため、有益と考えられます。

なお、本プリンシプルは、法令や取引所規則等のルールとは異なり、上場会社を一律に拘束するものではありません。したがって、仮に本プリンシプルの充足度が低い場合であっても、規則上の根拠なしに上場会社に対する措置等が行われることはありません。

上場会社における不祥事対応のプリンシプル

本プリンシプルは、以下のとおり4つの原則から成るものです。

上場会社における不祥事対応のプリンシプル ~確かな企業価値の再生のために~

 

企業活動において自社(グループ会社を含む)に関わる不祥事又はその疑義が把握された場合には、当該企業は、必要十分な調査により事実関係や原因を解明し、その結果をもとに再発防止を図ることを通じて、自浄作用を発揮する必要がある。その際、上場会社においては、速やかにステークホルダーからの信頼回復を図りつつ、確かな企業価値の再生に資するよう、本プリンシプルの考え方をもとに行動・対処することが期待される。

 

① 不祥事の根本的な原因の解明

不祥事の原因究明に当たっては、必要十分な調査範囲を設定の上、表面的な現象や因果関係の列挙にとどまることなく、その背景等を明らかにしつつ事実認定を確実に行い、根本的な原因を解明するよう努める。
そのために、必要十分な調査が尽くされるよう、最適な調査体制を構築するとともに、社内体制についても適切な調査環境の整備に努める。その際、独立役員を含め適格な者が率先して自浄作用の発揮に努める。

 

② 第三者委員会を設置する場合における独立性・中立性・専門性の確保

内部統制の有効性や経営陣の信頼性に相当の疑義が生じている場合、当該企業の企業価値の毀損度合いが大きい場合、複雑な事案あるいは社会的影響が重大な事案である場合などには、調査の客観性・中立性・専門性を確保するため、第三者委員会の設置が有力な選択肢となる。そのような趣旨から、第三者委員会を設置する際には、委員の選定プロセスを含め、その独立性・中立性・専門性を確保するために、十分な配慮を行う。
また、第三者委員会という形式をもって、安易で不十分な調査に、客観性・中立性の装いを持たせるような事態を招かないよう留意する。

 

③ 実効性の高い再発防止策の策定と迅速な実行

再発防止策は、根本的な原因に即した実効性の高い方策とし、迅速かつ着実に実行する。
この際、組織の変更や社内規則の改訂等にとどまらず、再発防止策の本旨が日々の業務運営等に具体的に反映されることが重要であり、その目的に沿って運用され、定着しているかを十分に検証する。

 

④ 迅速かつ的確な情報開示

不祥事に関する情報開示は、その必要に即し、把握の段階から再発防止策実施の段階に至るまで迅速かつ的確に行う。
この際、経緯や事案の内容、会社の見解等を丁寧に説明するなど、透明性の確保に努める。

参考資料

公表資料(2016年2月24日)