[ career-働き方 ]

勤務先が不祥事…
今後どうなるかを読み解くデータとは

 昨年末から今年にかけて企業不祥事の報道が絶えません。エアバッグの品質問題のタカタ、防振ゴムの検査データ偽装問題の東洋ゴム、工事データ改ざんの旭化成建材、不適切会計の東芝、燃費不正表示の三菱自動車......。大企業ばかりです。「自分の会社は大丈夫かな?」と不安になる人も少なくないでしょう。一方で、「大企業なんだし、なんとかなるでしょ」と楽観的にみている人もいるかもしれません。でも、本当に大丈夫なのでしょうか?

 勤め先、または取引先企業で不祥事が起きた場合、どんな状態になったら危機感を高めるべきか、さらにはそうした企業がどんな運命をたどるかについて考えます。

痛いのは不祥事を起こした企業だけではない

 不祥事を起こした会社でも、うまくいけば復活しV字回復をするところも出てくるでしょう。一方で、解体されて知らない企業に買収されたり、最悪の場合は倒産...なんて事例もたくさんあります。ただ、そうした結末を迎えるまでに、どんな経過をたどるかという兆候は、きっと隠されているはずです。何で探ればよいのでしょうか?

 それは、株価です!

 え? それって、上場企業に勤めている人だけでしょ、なんて声も聞こえてきそうですよね。確かに日本企業の約9割が未上場の中堅・中小企業です。しかし、こうした企業の多くが、上場企業のような大企業を取引先や受注先として持っています。大企業が倒産すると連鎖倒産が起きるなんて聞きますが、それだけ多くの企業が上場企業と間接的にでも取引をしているんですね。

 未上場の中堅企業に勤めていたとしても、メーンのお得意先に上場企業があり、その企業に不祥事が起きて業績が悪化したら、あなたの勤め先も影響がゼロとはいえません。だからこそ、上場企業の不祥事の話であっても他人事にはできないんです。

企業不祥事と株価はどうなる?

 株価とは、その企業に対して多くの投資家がどう評価しているかの表れです。この企業は危ないぞ! 赤字が続くぞ! と多くの投資家が考えていれば、株価は下落し続けるのが一般的です。

 そして不祥事が起きた場合、その会社の株価がどうなったかを経済学の視点から研究した論文は多数存在します。それらから、一つの傾向が見えてきます。例えば直近10年間に不祥事を起こした上場企業の平均的な株価パフォーマンスを見てみましょう。不祥事が発覚した後に、右往左往はあるものの、株価は下がり続けて、150日間にわたって累積株価パフォーマンスはマイナスを示していました。

 つまり、「株価が下がり続ける=投資家や多くの人がその企業に対して危機感を募らせ続けている」ということを示しているようです。もちろん、株価に影響する要因は業種やマクロ経済......とたくさんあります。しかし、それらの要因を統計的手法によって除いたとしても、長期にわたって不祥事が株価にマイナスに影響していました。

 不祥事といっても、株主への評価を良くするための粉飾決算、管理の滞りによる工場爆発、見栄のための虚偽記載......様々なタイプがあります。では、不祥事をタイプ別に分けて累積株価パフォーマンスを見てみると何が起きるでしょうか?

 なんと、リコールや偽装表示といった製品に関するものは、特に株価下落が顕著という傾向が報告されているのです。会社の利益の源泉である製品の信用を失うことは、長期にわたって株価も業績も非常に厳しくなることを示しているのです。

 雪印食品という会社を覚えていますか? この会社は食肉偽装問題で、消費者の信頼を一気に失いました。その後は、事業ごとに解体されて買収・吸収されていきました。一度信用を失った食品を好んで買う人はいませんよね......。

 自分の勤め先、または取引先の上場企業に不祥事が起きたら、どんな問題に関することなのか。世の中からの評価や先行きに関して何か異変が起きてないかを探るためのバロメーターとして株価をウォッチするのはどうでしょうか。

 将来を見すえるうえで、株価の観察は投資に興味がなくても必要な視点なのかもしれません。私も、自分のこととして取引先企業の株価をウォッチしてみようと思います。

崔真淑(さい・ますみ)
 マクロエコノミスト。Good News and Companies代表。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。化粧品会社エイボン・プロダクツ社外取締役。1983年生まれ。神戸大学経済学部、一橋大学大学院(ICS)卒業。大和証券SMBC金融証券研究所(現:大和証券)では株式アナリストとして活動し、最年少女性アナリストとして株式解説者に抜擢される。2012年に独立。経済学を軸にニュース・資本市場解説をメディアや大学等で行う。若年層の経済・金融リテラシー向上をミッションに掲げる。

[nikkei WOMAN Online 2016年6月15日付の記事を再構成、日経電子版から転載]