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経済

業績急回復・マクドナルドの“復活”は本物か?

マーケティングコンサルタント 新井庸志
 不祥事などで業績不振が続いていたハンバーガーチェーン・日本マクドナルドホールディングス。だが、このところ復調の兆しが見えてきたようだ。2016年1~3月期の連結決算では、営業利益が7四半期ぶりに黒字を計上した。実際に店舗を訪れてみると、マクドナルドのある「変化」に気がつくという。店舗の定点観察を続けるマーケティングコンサルタント・新井庸志氏がマクドナルドの実情に迫る。

消費者の意識“否定”から“許容”へ

 日本マクドナルドホールディングスの2016年1~3月期の経営成績を見てみると、税引き後利益は1億7600万円の赤字(前年同期は145億円の赤字)となったものの、赤字幅は縮小し、営業利益は1億5100万円の黒字(前年同期は99億円の赤字)で、7四半期ぶりに黒字に転換した。さらに、全店売上高は前年同期比23%増の約1021億円、全店客数は同8.1%増など、前年同期より大きく改善された数字が並んでいる。また、先頃発表された5月の全店売上高も前年同月比17.3%増となっている。

 なぜ、マクドナルドの業績は回復し始めたのか。この回復基調は今後も続くのだろうか。

  • マクドナルドの人気商品「ロコモコバーガー」

 マクドナルドの業績が急落したのは、14年7月に起きた消費期限切れ鶏肉の使用問題が大きなきっかけだ。13年12月期に約5049億円あった全店売上高は、この問題を契機に、14年12月期には約4463億円、15年12月期には約3765億円と激減していった。売上高の減少とともに利益も減少、14年12月期には01年の上場以来初めての赤字に転落し、15年12月期には税引き後赤字が約350億円にまで拡大した。

 飲食業にとって「味」や「価格」以上に重要な要素である「安全」と「安心」。この根幹に関わる部分で消費者から「ノー」を突きつけられると、企業は大ダメージを受ける。特にマクドナルドの場合、子供のいるファミリー層が主要顧客層だった。他の顧客層以上に「安全」や「安心」にこだわる傾向が強いファミリー層の離反が、業績悪化の大きな要因につながった。

 消費者の信頼を回復しようと、マクドナルドは安全に関する取り組みを強化した。それは、広告を使ってイメージを良くしようといったやり方ではなく、商品の原材料や製造工程の見直しなど、抜本的な対策が多かった。こうした取り組みを約2年にわたって続け、時間の経過も重なった結果、マクドナルドに対するネガティブな感情が薄れてきた消費者が増えている。業績回復の背景には、「マクドナルドは絶対に食べない」という“否定”から「マクドナルドを食べても良い」という“許容”へと、消費者の意識が変化してきたことが大きな前提条件としてあったのだ。

 さらに、マクドナルドの回復基調を下支えする大きな要素が「現場のホスピタリティーの改善」である。しかし、このことも、先に述べた前提条件があったからこそ、有効に機能するようになったと言える。

 人気があった頃のマクドナルドの象徴的フレーズは、メニュー表などに記されていた「スマイル0円」だ。マクドナルドの魅力は、競合商品と比べて飛び抜けておいしいことでも、とても安い金額で食べられることでもない。多くの日本人にとって、マクドナルドの魅力とは、「家族や友人と楽しい時間が過ごせる場所」であったことだ。そこにあったのは、店員のスマイルやあいさつ、気持ちの良い応対、つまり「ホスピタリティー」だ。味がそこそこ良く、価格もそこそこ安い。そして現場のホスピタリティーが優れている。これこそマクドナルドの魅力だったのだ。

 ところが、14年に不祥事が起きる前から、マクドナルドの現場のホスピタリティーは徐々に失われていた。そのきっかけとなったのが、「フランチャイズ(FC)の加速」と「マックカフェの導入」であった。


2016年06月09日 18時39分Copyright © The Yomiuri Shimbun