選手個人の不正行為、どう対処すべきか

安田 最後は「リーガルリスク」です。例えば、未成年の部員が3人ぐらいで喫煙していたことが発覚したら、その部は連帯責任で活動停止になってしまいかねない。本来、「喫煙は個人の責任です」という合意書を事前に交わしておけば、そうはならないはずです。なぜそうしないかというと社会的なコンセンサスがないからでしょう。

 先日発表した関東学院大学との共同プロジェクトでは、そういうリスクについて大学としてきちんと決めていきましょうということにも取り組んでいきたいと思っています。

―― 確かに日本では、部員の不祥事が「連帯責任」になるケースが多いですね。

安田 米国では部員が何か不祥事を起こした場合、学生スポーツの団体「NCAA(全米大学体育協会)」が決めた規定に基いて処罰を下します。組織的な不祥事でなければ、チームへの処罰ではなく、選手の処罰だけで終わる。

 でも、日本は必ず監督の進退問題になったり、チームが出場停止になったりといった連帯責任のカルチャーがある。処罰を誰がどのルールに基いて決めているのかが非常に分かりにくい。現場の監督にリスクがありすぎるんです。これでは指導者を志す人材が夢を持てませんし、学生スポーツが発展するわけがありません。

ドームは2015年1月から5年間の巨人軍とオフィシャルパートナー契約を結び、「ジャイアンツが世界一のチームになる」というビジョンを掲げている。
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 同じような状況は日本のプロスポーツの世界にも見られます。最近では、プロ野球で読売巨人軍の野球賭博が問題になりました。

 もちろん野球賭博は、あってはならない不正行為です。ただ、チームが組織として主体的に関わっているのではない限り、選手個人が犯した罪や不正行為は自己責任であるべきで、チームとしての責任はとても限定的なものでしょう。ドームは巨人軍とオフィシャルパートナー契約を結んでいますが、組織関与がなければ、契約の毀損には該当しないと考えています*2

*2 読売巨人軍の野球賭博に関して、ドームが発表した見解はこちら

 法治国家では罪に対する刑罰が法律によって定められているはずです。それなのに法律や規制の枠を超えた感情論に基づく「人治統制」で連帯責任が課され、無実の選手や指導者、チームに責任が拡大されることには懸念を抱かざるを得ません。米国のプロスポーツでは近年、多くの逮捕者が出ていますが、組織としての関与がない限り、チームに責任が及ぶという事態は起きていないのです。

 こうした個人の不祥事が起きたときに喜んでいるのは、週刊誌などのマスメディアだけではないでしょうか。そこに社会全体が乗っかってしまう傾向がある。法律に照らし合わせてどうかという事実関係をきちんと調べて、法治国家としての正しい知識で判断することがスポーツ界の健全な発展につながると思います。

―― アンダーアーマー社の躍進は、米国で女性市場の獲得に成功したことが大きいと思います。女性が活躍できる場を広げることはスポーツ界やスポーツビジネスでも大切なポイントになりますが、ドームはどのようなことに取り組んでいますか?

安田 LGBT*3もそうですが、「ダイバーシティー(多様性)」は現代のキーワードの一つです。この点については、経営者として僕らも反省しています。これまでは男の物差しで女性を評価していました。「頭もいいし、頑張ってるけど、もっと発言しなきゃダメ」「管理職になるとすれば、もっとリーダーシップを発揮しなきゃ」といったように。

*3 LGBTは、「レズビアン」「ゲイ」「バイセクシュアル」「トランスジェンダー」の頭文字

 でも、これまで考えてきたリーダーシップは男の物差しで考えたものであり、女性は違う形でリーダーシップを取れるのではないでしょうか。女性視点だからこそ実現できる仕事を集めて、その中でリーダーシップを取ることもできるのではないでしょうか。