法令遵守がコンプライアンスではない ~ パロマ事件の教訓

法令と社会的要請のズレ

 日本では法律が輸入されたこともあって、司法の機能も欧米とは異なる。郷原氏は日本の司法は「異端者を社会からはじき出す機能と、一般人同士のいざこざやもめ事の後始末をつける機能が中心であり、事件や事故の原因を追及したり、問題を根本的に解決したりする機能は果たしてこなかった」という。

 「米国では、社会の多くの問題が訴訟の場に持ち込まれ、議論を通じて法が形成され、社会に適合していく。こうして形成された法令の違反に関してはときに厳しいペナルティーが科せられます。一方、日本では一度、作られた法はなかなか変わりません。そのため、市民社会と法との間に距離ができ、ズレが生じる。そうなると、市民社会に反する行為であっても法的なペナルティーは科せられない。また、たとえ法的に律することができる違法行為であっても、その法的ペナルティーは低いレベルに留まる傾向があるのです」。

 この少ないペナルティーを補っているのが「社会的な罰だ」と郷原氏は言う。違反者や違反容疑者に対して社会の批判が非難となり、バッシングからいじめ、リンチにエスカレートする。確かに日本社会は「一人の悪者」を寄ってたかって叩き、反論の余地を与えない傾向がある。郷原氏はそれが「社会の要請に反した結果としてのペナルティーだ」と語る。

 「本来、法令規則は社会的要請を受けて作られるはずなので、通常は個人も企業も法令を守っていれば非難を受ける必要はないはずですが、日本では法令と社会的要請にズレがあるため、法令を守っていても社会的要請に反することがあり得るのです」。

社会的ペナルティーを受けたパロマ

 このことを示す典型がパロマ工業の事件だった。パロマはガス給湯器の大手メーカーであり、国内ではリンナイに次ぐ第2位だ。非上場ながら売上高は2413億円(2005年連結実績)、従業員は1万名を超えるメーカーである。

 このパロマ製のガス瞬間湯沸かし器による一酸化炭素中毒事故が過去20年間で28件発生し、うち21人が亡くなったという事実が今年、発覚し、大きな社会問題となった。

 事件は1996年に起きた事故に対して、死因を心不全とした結論に納得できない遺族が警察に再捜査を要望。事故から10年経って、湯沸かし器の不具合による一酸化炭素中毒だったということが判明した。

 パロマは社長の記者会見で当初、修理業者による不正改造が原因として、「製品にはまったく問題がない」と主張。ところが、その4日後に同様の事故がさらに判明し、事故原因の一部が安全装置の劣化であり、事故当時、一連の報告が経営トップになされていなかったことをパロマは明らかにした。これによって、一気にパロマへのバッシングが始まったのだ。社会がパロマにペナルティーを与えたのである。

 パロマの売り上げは大幅に減少し、無償交換や無償点検に伴うコストは200億円を超え、パートやアルバイトなどのリストラに追い込まれた。何よりも企業としての社会的な信頼失墜は大きな打撃だった。

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