揺らぐ企業ブランド(信頼性)

 近年、企業の不祥事が相次いで発生しテレビや新聞等の紙面を賑わしています。社長が「この度はご迷惑をおかけして申し訳ありません」と、頭を下げる場面を目にすることが多々あります。
 不祥事は、事故を起こした企業が大きく知名度が大きければ大きいほどその影響は大きく、事故による損失ばかりではなく何十年・何百年と先人が築いてきた『企業ブランド(信頼性)』を一気に失い、上場会社ともなれば更に株価の大暴落・上場廃止・倒産と企業の存続危機を招きかねません。また、経営陣は管理体制の整備義務を怠ったとして、株主からその損害として多額の賠償支払を求められるケースもあります。

 例えば雪印乳業が起こした集団食中毒事件は、15,000人もの被害者を出しその調査では、自ら定めたマニュアルを守らず、2.3週間の間バルブの洗浄を怠り、また返品された製品を再利用するための開封作業を屋外の手作業で行なっていたなど、次々とそのずさんな衛生管理状態が明らかとなりました。
 事件後も社長が詰め寄る報道陣に対し「私は寝てないんだよ」と発言するなど、その対応の不味さが更に拍車をかけ、消費者の信頼を大きく失うこととなったのです。
 その後信頼回復のための体制づくりを進めていた矢先に、同グループ企業(雪印食品)で発生した「牛肉偽装事件」により株価は暴落し雪印食品は廃業となり、雪印グループは解体・再編を余儀なくされました。

 かつては誰もが「雪印マーク(スノーブランド)」と絶対的な信頼を得ていた企業が、この事件により消費者からの信頼を失い、商品は次々と排除され店頭に並ぶ事さえ許されないマークとなってしまったのです。
 法律上は雪印乳業と雪印食品は法人格ですが、同じ『雪印』として消費者から見れば「またか!」と思われてしまいます。企業の信頼はグループ全体で築きあげることが求められる一方で、それを失う事にはグループ内の1社員の不祥事が原因と成りうるのです。

  最近発覚した企業不祥事はこの他にも、『三菱自動車工業のリコール隠し』『西武鉄道の有価証券報告書虚偽記載』、『カネボウの粉飾決算』、『ライブドア粉飾決算』、『JR西日本の列車脱線事故』、『耐震強度偽装事件』、『明治安田生命の保険金未払い』、海外では『エンロン・ワールドコムの粉飾決算』と枚挙に暇がなく、その後も一向にとどまる気配がありません。

 

  

 この『雪印食中毒事件』の原因は正確なところは判明していません。そんな中事件直後、毎日新聞社に雪印社員の家族からの手紙が送られてきました。
その内容を要約すると、「私は雪印乳業大阪工場に勤務している者の妻です。『ずさんな衛生管理の最大の原因』は、業績のみにとらわれ、従業員は日々遅くまでの残業と過酷な労働、上司は保身に徹し、衛生管理は最後の最後になってしまってるという状況です。
 何のために労働基準法があるのか、全く無視した過酷な労働が毎日行なわれていた結果、疲労が蓄積されすべて手を抜くこととなってしまって、このようなずさんな衛生管理になったのです。私は以前から主人を見ていて起こるべきことが起きたと感じております。」(『失敗学のすすめ』 より)

 同社の衛生管理がずさんだったことは間違いありませんが、その原因として数人の人為的ミス(マニュアル通りに掃除をしていなかった)ということだけではなく、他のいくつかの要因が複雑に絡み起きたもので、手紙の内容からもこの事故の背景にはもっと重大な問題が潜んでいると考えられます。