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従業員が逮捕されてしまった場合、それを理由にクビにすることは可能か


同じ会社に勤める人が逮捕されたり、刑事罰を受けるということは珍しくはありません。

平成26年の警察庁発表のデータによると、刑法犯の検挙人員は251,115人に上りますので、単純計算ですが約500人に1人は刑法を犯している計算になります。

さらに道交法等を含む特別法犯を犯す者も多くいますので、思った以上に犯罪は身近なものだといえるでしょう。

ですので、数千から数万人規模の企業では従業員の逮捕等はいつ起きても不思議ではありません。しかし、頻繁に起こることではありませんので、従業員が犯罪を犯せば企業はその対処に頭を悩ませることになります。

このような時、何かしらの処分を下すケースが多いと思いますが、極めて重い処分である懲戒解雇を適用することは可能なのでしょうか?

懲戒処分を行う前提条件

懲戒処分を行う前提として、予め就業規則で懲戒事由を明確に定めて労働者に周知することが必要です。

一般的には就業規則で、会社の名誉・信用を著しく害したときとか、会社の体面を著しく汚したときなどの懲戒事由を定めていますが、このような懲戒事由を定めがない場合は、業務外の犯罪行為を理由とする懲戒処分はできないことになります。

基本的に懲戒解雇は可能

刑罰法令違反行為を行ったり、刑事罰を受けた場合、基本的に懲戒解雇の理由となる場合が多いです。

しかし、業務外の犯罪行為で、会社業務との関連性や影響が極めて希薄な場合には、例外的に懲戒処分までは認められないこともあります。

就業規則に基づく懲戒解雇の要件

横領や会社備品の窃盗、業務妨害など業務上の犯罪行為の場合、就業規則に刑罰法令違反を明確に規定していれば、懲戒解雇ができないケースはほとんどないでしょう。

会社への影響も重大であり、懲戒解雇が可能です。

一方で、業務外における痴漢や窃盗、暴行による懲戒解雇の事例も実際には多数あります。

本来、懲戒処分は企業内の秩序維持を目的とするものですから、業務外の非行の場合、企業秩序に直接の関連を有するか、企業の社会的評価の低下毀損につながるおそれがある場合に、懲戒処分が可能と考えられます。

もっとも、実際の事案では、業務外の非行であっても、容易に懲戒解雇が認められる傾向にあり、経営者側の立場からすると、会社の信用低下が事後的に回復困難であることも考えると、刑罰法令違反の場合には、懲戒解雇を中心に処分を検討せざるを得ないのが現実的なところではないでしょうか。

痴漢や窃盗、暴行事件など、業務外の違法行為の全てが懲戒解雇として有効というわけではありませんが、経営者の立場からは、犯罪行為があった場合、基本的には懲戒解雇の可能性を検討してもよいでしょう。

大手法律事務所勤務を経て、東京都港区で星野法律事務所開業(共同パートナー)。企業顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中国法務、外国関連企業、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件、国際案件等が専門。中国語による業務可能。