東京地検特捜部は5日、豊田通商によるトー メンエレクトロニクスの株式公開買い付け(TOB)で金融商品取引法 違反(インサイダー取引)を行った疑いで、会社員の橋本和幸と会社役 員の戸田敏博の両容疑者を逮捕した。特捜部と証券取引等監視委員会は 合同で捜査・調査を進めていく。

同地検の発表によると、橋本容疑者(56)は2013年11月中旬、豊田 通商とトーメンエレ株式譲渡で交渉していたある企業の社長から豊田通 商がトーメンエレにTOBを実施するとの情報を得た上で、戸田容疑者 (66)と共謀し、同容疑者の名義でTOB発表前にトーメンエレ株約3 万株を3534万円で買い付けた。

日本では12年に企業の公募増資をめぐり証券会社が関与した複数の インサイダー取引が発覚。海外投資家を中心とした証券市場への信頼が 大きく揺らいだ。TOBなど重要事実の漏えいによる内部者取引はその 後も散発的に行われており、当局は公正な市場形成のために監視を一段 と強化している。

トヨタグループの豊田通商は14年1月28日の午後3時半、連結子会 社であるトーメンエレの普通株式を1株当たり1650円で取得することを 決議したと発表した。これを受け28日終値で1193円だったTOB対象会 社の株価は翌日から急騰。29日には前日比25%、30日にも同10%上昇し た。

豊田通商の稲垣明知広報室長はブルームバーグ・ニュースの取材に 対し、監視委と同地検がこれまで同社に調査に入っており、トーメンエ レのTOBに関連した当時の会議や打ち合わせの議事録を提出するなど 協力をしてきたことを明らかにした。その上で今回の事件について「逮 捕者が出たことは遺憾だ」と述べた。

過去の摘発

監視委は今年度、有価証券報告書などの虚偽記載や風説の流布・偽 計、相場操縦で5件の告発したが、インサイダー取引は含まれていな い。インサイダーでの告発は13年4月の1件が最後だった。

日本では12年から13年にかけ企業の公募増資に絡むインサイダー取 引が相次いで発覚。日本板硝子、みずほフィナンシャルグループ、東京 電力、国際石油開発帝石の増資では引き受け主幹事証券の社員から情報 を得ていた複数のケースが監視委によって摘発された。

こうした事態を受け、政府は公募増資に絡む事案の多発を受け13年 6月に金商法を改正、新たに情報漏えい者も刑事罰の対象に加えるなど 罰則を強化した。

監視官

監視委が昨年6月に公表した活動状況によれば、インサイダー取引 に該当するか否かの審査は14年3月末までの1年間で943件に上ってお り、13年度比で7.8%、12年度比では15%増加した。

金融庁は証券会社などに関する情報収集・分析体制、検査体制を強 化するため監視部門を含めた人員増強を続けており、14年度は763人 と13年度から3%、12年度比では7%増加した。5年前と比べ13%、10 年前比では70%強増加している。

--取材協力:上野英治郎.