三井物産、無償ODA撤退へ 不祥事清算狙う

  政府の途上国援助(ODA)事業をめぐる不祥事などで社長、会長が辞任する事態になった三井物産は4日、無償ODA事業から完全撤退する方針を固めた。不祥事の温床となった事業から全面的に退くことで、対外的に企業再生の決意と反省を示す。来週にも経営会議を開き正式に決定する。日本のODAと密接にかかわる最大級の総合商社が事業から撤退するのは初めて。ただ、同じODAのうち主軸の円借款事業は継続する。

  同社は、国後島の発電施設不正入札事件で社員3人が7月に逮捕されたほか、モンゴルへの無償援助をめぐり、同国政府高官に現金を渡した疑惑が発覚。結果的にトップの辞任に追い込まれた。このため、8月2日に社内にODAについての改革委員会を発足させ、今後のODA事業への取り組み方針を議論してきた。

  その結果、反省の意思を明確に打ち出す必要があることに加え、100%資金を相手国に贈与し、返済義務がない無償ODA事業は、応札企業が日本企業に絞られる「ひも付き」で、事業の立案、着手を商社が取り仕切っている構造のため、今後も不正が起きる可能性がゼロではない、などの理由から撤退方針を固めた。

  三菱商事が9月末に、無償ODAについては利益目標を設定しない、という改革方針を発表し、三井物産でも同様の取り組みを検討した。しかし、ビジネスで利益を追求しないのは中途半端で、株主への責任上、疑問がある、と判断したことも撤退につながった。事業の実施部隊だった産業システム事業部のプロジェクト第3室は7月末に廃止している。

  一方、96年度から国際入札になった円借款事業については入札参加企業間の競争が激しいことから透明度が高く、不正に巻き込まれる可能性が低いとして、継続する。

  外務省の資料などによると、三井物産の01年度の無償ODA事業受注額は約46億円(32件)。大手商社8社のうち、三井のシェアは21.2%で第3位。10億円以上の円借款事業は640億円(2件)。01年度の連結売上高が12兆6000億円の同社にとって、経営への大きな影響はないと見ている。

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  <政府の途上国援助(ODA)事業>

  無償資金協力事業と有償資金協力(円借款)事業に分けられる。無償は発展途上国の中でも所得水準が低い国に贈与され、その資金で学校や病院の建設、医療器材などが購入される。1件あたり数千万円から10億円程度までで、日本の商社の応札、落札が中心。有償は、やや所得が高い国向けが中心。低利資金が貸し付けられ、ダムや発電所、道路、港湾などインフラ施設がつくられる。1件あたり数十億円から数百億円と巨額で、ゼネコンや商社、プラントメーカーなどが共同で応札している。

  「asahi.com」 2002年10月4日