業績が伸び悩み、役員報酬を減額せざるを得ない状況に陥ることがあると思います。そのときに法人税のことを考えずに減額した場合に思いがけず大きな税負担を強いられることがあります。役員報酬を下げても税金が増えてしまっては元も子もありません。

ここでは役員報酬を減額する上で押さえておくべきポイントをわかりやすく解説していきます。これさえ押さえておけば何も怖がることはありませんのでしっかりチェックしてください。また、減額するときに必要となる株主総会議事録の雛形もダウンロードできますので、是非ご活用ください。

 本題に入る前に

表題のとおり0から説明していきます。0から理解するためには役員報酬の減額手続きの説明に入る前に次の2つのポイントを押さえておく必要があります。

  1. 損金とは、損金不算入とは
  2. 役員報酬が損金に算入される条件とは

この2つが前提となりますので、まずはその点を一つずつ押さえていきましょう。

 損金とは 損金不算入とは

「損金」と「損金不算入」という用語は、知らないと法人税法の話を理解することができないというほどの超基本ワードです。逆にこの2つの用語を知っていれば話は理解できます。あとはその規定を知っているか知らないかだけの話になります。この2つの用語を知らないとその話を理解できないので前に進みません。

 定期同額給与を知ろう

役員報酬は実は、法人税法でかなり厳しく縛られています。

役員報酬を損金に算入する(法人税法上も費用にする)にはなんと、たった一つしか方法がありません。

それは以下の条件に則って役員報酬を支給するということです。

  1. 支給時期が1月以下の一定の期間ごと
  2. 会計期間内の各支給期間の支給額が同額

つまりこの要件を満たさずに役員報酬を支給した場合には、そのルールに則っていない部分が損金に算入されないことになります。損金に算入されないということは収入から差し引かれないということになりますのでその分利益が大きくなり、結果的に税金が多くなるということを意味します。

逆にこの2つの条件を満たせば役員報酬は全額損金に算入されます。

この条件を満たす役員報酬を法人税法では定期同額給与と呼んでいます。繰り返しますが、定期同額給与のみが全額損金に算入されます。

まずはこの点を押さえてください。

「定期同額給与となっていない場合には損金に算入されない!」です。

これは強力です。元国税調査官の立場から申し上げますと、これだけ身近でこれほど恐怖な規定はないと思います。なので次に説明する内容は要チェックです。

それでは、要件を一つ一つ細かく見ていきましょう。

 「支給時期が1月以下の一定期間ごと」とは

これは文字通りですが役員報酬を費用として損金に算入するには1月以下の期間でかつ一定の期間ごとに支給する必要があるということです。

つまり半年に1度支払ったり、今月支払ったけど、次の月は支払わないということをしているとこの要件には合致しないということになります。

要するに毎月支給しなさいということです。

 「会計期間内の各支給期間の支給額が同額」とは

支給する役員報酬が以下の条件を満たしていれば「会計期間内の各支給期間の支給額が同額」として損金に算入されます。逆に満たさないと費用として損金に算入されません。

 同額とは

1 給与改定がない場合

その会計期間内の各支給時期(給料日)に支給される金額が同額である。

2 給与改定がある場合

ある一定の要件を満たす給与改定(後述)があった場合で、

①会計期間開始の日から改定の日の前日まで

②改定の日から次の改定の日の前日まで

③次の改定の日から事業年度終了まで

①〜③の各期間内の各支給時期に支給される金額が同額である。

①は改定が行われるまでの3ヶ月間が同額になっています。②も次の改定が行われるまでの4ヶ月間が同額になっています。③は改定から期末までの5ヶ月間同額を支給しています。この場合は同額として扱います。という意味です。

なお、同額というのは実際に支給しておらず、未払費用として計上している場合であっても同額として扱われます。

さて、ここでやっと前置きが終わりました。

整理しますと「役員報酬は一月以下の一定の期間ごとに同額を支給しないと損金に算入されない」ということでした。

また、給与改定をした場合でもその改定前と改定後でそれぞれの期間内で支給額が同額であれば定期同額給与として損金に算入されるというものでした。

今回の本題は「役員報酬を減額するときの方法」です。

役員報酬を改定する場合はさらに要件にあった改定でなければいけません。それでは本題に入っていきましょう。

 役員報酬を減額するには

役員報酬を減額してその全額を損金に算入するためには、次の3つ要件に合うように役員報酬を改定するしかありません。どのように改定して支給すれば要件に合致するかを、一つ一つ確認していきましょう。

 定時株主総会等での減額

一つ目は一番安全な減額の方法です。

定時株主総会の決議や総会後の取締役会の決議などにより会計期間開始の日から3ヶ月以内に減額を行うという方法です。

例えば3月決算の法人で、5月に定時株主総会を開催して、6月支給分から役員報酬を減額するケースが当てはまります。下の例では改定前の4〜5月は70万円で、改定後の6〜3月が50万円でそれぞれの期間が同額になっているので問題ありません。

 定時株主総会議事録のサンプル

定時株主総会で役員報酬を減額する場合の株主総会議事録の雛形を示しておきますので参考にしてください。

 業績悪化による減額

続いては、業績悪化による減額です。

「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由で」減額されるときは定期同額給与に該当する改定と認められます。

税法の解釈でよく出てくる部分なのですが、じゃあどういうときが「経営の状況が著しく悪化したこと」に当たって、どのようなときに「その他これに類する理由」に該当するのか?という疑問が湧くと思います。

答えを言うと「はっきり言うことはできません。」と言わざるを得ません。

よく言うグレーゾーンというところで、もし調査で著しく悪化しているとは言えませんね。と指摘を受けた場合に、納得がいかなければ法廷で争って初めて明確な答えが出る、ということになります。

そうは言っても対処しなければいけないので、どのようなときに業績悪化のための改定と認められるかについて具体例が挙げられていますので、それを参考に判断することになります。

 業績の悪化による改定と認められる具体例

⑴財務諸表の数値が相当程度悪化したこと

⑵倒産の危機に瀕したこと

⑶株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合

※ただし株主との関係については、同族会社のように株主が少数の者で占められ、かつ、役員の一部の者が株主である場合や株主と役員が親族関係にあるような会社について安易にこれを適用すればそれは調査で否認される危険性を伴います。そのような場合には、役員給与の額を減額せざるを得ない客観的かつ特別の事情を具体的に説明できるようにしておく必要があります。

⑷取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合

⑸業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合

⑹売上の大半を占める主要な得意先が1回目の手形の不渡りを出したなどの客観的な状況があり、得意先の経営状況を踏まえれば数か月後には売上が激減することが避けられない状況となったため、役員給与の減額を含む経営改善計画を策定したような場合

⑺法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどは該当しません。

⑴や⑵のように会社の存続が危ぶまれるようなケースは当然に認められると考えられます。そしてそこまではいかないケース⑶〜⑹のように第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じた場合は客観的に判断できるため認めています。逆に⑺で示しているように、第三者との関係もないし、会社が危機に瀕しているわけでもない場合には注意が必要になります。

その場合には、役員給与の額を減額せざるを得ない客観的かつ特別の事情を具体的に説明できるようにしておくという段取りとなります。

したがって業績の悪化で減額するときは上記具体例を参考にして慎重に決定する必要があります。

ただし元国税調査官の個人的な意見を言わせてもらいますと、大会社でもなければ会社が赤字でそれを回避するために減額する場面で、敢えてムキになって否認しにいくかと言ったら、よほどのことがない限り積極的には動かないと思われます。節税とは反対の局面です。国税調査官は税金を減らそうとするところにこそ目を光らせる人種だからです。

なので、普通の人が聞いてそれは仕様がないよね、という場面であれば通常は認められると思われます。

 業績悪化による減額場面の臨時株主総会議事録サンプル

業績悪化による減額を株主総会で決定する場合の臨時株主総会議事録の雛形を用意しました。ダウンロードしてご使用いただけます。

 臨時的な理由による減額

次のような臨時的・突発的な理由による減額は定期同額給与として認められる改定とされています。

・代表取締役が急病などの理由により他の役員が代表取締役へ昇格するなどの役員の職制上の地位の変更

・地位の変更とまでは行かないが、病気で入院している間、入院前と同じようには経営に参画できないために減額するといった場合

・合併、分割等により役員の職制上の地位は変わらないもののその職務内容が大幅に変わる場合

以上の3つのいずれかの条件に合致した改定によれば、その改定前と改定後の報酬が同額であれば定期同額給与としてその全額が損金に算入されます。

2つ目と3つ目の改定は判断が分かれる場面が用意に想像されますので、できれば1つ目の条件で改定したいところです。役員報酬の減額を少しでも考えるのであれば決算期末から申告の間の2ヶ月の間で慎重に検討を重ねましょう。

最後に損金に算入されないという言葉をこれまで繰り返し使ってきましたが、実際に損金に算入されないこととなった場合にはどの部分が損金に算入されずに所得に加算されるのかを見ていきたいと思います。

 損金に算入されない金額はどの部分?

すぐ下の図を見てください。例えば3月決算の法人で4月から9月まで月額50万円の役員報酬を支払っていて、その後先に説明した改定に当てはまらない改定を行って10月から3月まで月額70万円支給していた場合はどうなるのでしょう。

回答は紫色の部分が損金不算入となります。

先ほどの例で言えば増額した20万円×6月=120万円が損金不算入となり所得金額に加算されます。

逆に減額改定が先の例に当てはまらなかった場合は次の図の紫部分が損金不算入となります。

このように役員報酬は定期的に支給される同額の部分のみ損金に算入されます。そうでない部分は損金に算入されず、言ってしまえば利益になるのと同じ意味を持ちます。結果的にその分税額が増えます。つまり、同額になっていない額×誤っている月がもろに利益になって、税額として跳ね返ってくるのでここを誤るとかなり危険です。

 まとめ

いかがだったでしょうか。少し長くなりましたが、役員報酬を減額する方法についてすべてをお話ししました。今回の記事で触れられた部分を押さえていれば、役員報酬を減額する局面で考慮しなければいけないポイントでもれはありません。

まず、要件にあった改定を行うこと、そしてその改定の前と後ろのそれぞれの期間で毎月同額を支給するという点が今回のポイントでした。

この部分を一つ一つ確実にクリアして正しい形で役員報酬の減額をやり遂げてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

私は、税理士なしで法人税の申告書を作成する方を全力で応援しています。法人税の知識がないばかりに高額な決算・申告料を支払わなければならない現状を変えたいと考えています。なぜなら世の中税理士を雇える会社さんばかりではないですし、申告書を作成するだけならもうテクノロジーの力で十分自分でできる時代なのですから。