今週は日本航空の「お家騒動」を取り上げたい。

筆者が扱うリスクマネジメントは、「マネジメント」にアクセントがある。いわば、潜在化していた経営リスクが顕在化する初期に焦点を当てるものである。それゆえ、当コラムは基礎データを提示し、読者とともに良質なコミュニティを形成しつつ、リスク回避のためのマネジメント手法の高度化を求めるサイト&コラムであるともいえる。

そうした観点からは、今回の日本航空グループ取締役らからの社長退陣要求は、表面化すること自体が珍しい、経営リスクを考える上での格好の題材である。

JALについては、昨年6月にも、第90回「頻発するJALの不祥事」にて、頻発する不祥事の要因として、「定刻運航のプレッシャーの下での連続不祥事」「基本動作での相互確認の欠如」「現場判断での見切り発車」「善意に基づく本人の申告」「重大インシデントの認定」などを指摘した。

そのとき、経営戦略上の課題として「JAL、JASの経営統合の弊害の検証」「航空業界のリスク構造の変化への認識」「子会社を含むマネジメント上の対応」「顧客離れへの歯止め(マーケティング戦略の再構築)」を掲げたが、まさに行間で指摘した「経営上の責任問題」として、今回の社長辞任要求が出てきた形だ。

●事件の背景

・兼子体制から新町体制、不祥事(事件事故)による求心力の低下
 一連の騒動のきっかけの一端は、98年に旧JALの社長の座についた兼子氏(現常任顧問)がJASとの統合を強引に進めたことだ。JALの国際線を主体にしたビジネス分野が、9.11テロ事件など国際情勢不安に伴う顧客の減少や原油高によって大打撃を受けたため、国内線中心のJASとの統合によりバランスを取った形だ。

しかし、統合にあたり旧JALの6つの労働組合、旧JASの3つの労働組合との調整や、企業文化の違い、運航マニュアルの違いによる操作ミス、経費削減を目的とする整備の外部委託など、様々な利益捻出策が安全運航に影響を与えているのではないかというのが、指摘の一つである。

兼子氏は頻発する事件事故の責任を取る形で会長に退いたが、腹心である新町氏にCEOのポストを譲ることで兼子体制の維持を図った。その新町社長はJAL貨物出身で、労務の道を長く歩み、兼子会長が絶賛していた。相次ぐ不祥事で、兼子会長の代表権返上が早まったため、大株主の糸山氏は、四面楚歌の状態で大変だろうと応援していたと述べている(後述の糸山氏のサイトでのコメント)。

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