オリンパス、大王製紙に象徴される日本企業のコーポレートガバナンス(企業統治)の不備。世界からは、日本の産業界全体に対する不信の声が数多聞こえてきました。なぜこんな不祥事が続発する事態になってしまったのでしょうか?

 振り返ればここ10年で、ガバナンスに関する法制度は激変しました。2003年には委員会等設置会社制度が導入され、導入企業には過半数の社外取締役の導入が義務付けられました。コンプライアンス(法令遵守)の厳格化、個人情報保護法の制定など、企業行動を縛る各種の制度が整備されたのも、ここ10年の話です。つまり、日本のガバナンス制度は格段に進化したはずでした。それが、この始末。

 まず背景にあるのは、結局、「仏作って魂入れず」。つまり企業側の制度運用に問題があったということです。いくら立派な制度でも、本気になって運用しようと思わなければ、すべては画餅に帰します。オリンパスも大王製紙も、形のうえでは他社と遜色のない制度を導入していました。ところがそれが機能しなかった。例えば、3人の社外監査役を揃えていた大王製紙では、うち2人が2代目社長で元顧問だった井川高雄氏の高校時代の友人でした。

 もう1つの背景を探るとすれば、それは社内だけではなく、社外からのチェック機能も働きにくくなったという事実です。オリンパス問題では、20年間にわたる飛ばしなどの不正経理を監査法人も取引銀行も見抜けませんでした。目を凝らせば必ず見抜けたはずなのに、顧客を失うことを恐れたがゆえに見逃したわけです。

 では、ガバナンスとは何のためにあるのでしょうか?不祥事防止などは当たり前のことで、ガバナンス以前の問題です。「日経ビジネス」は、それは「経営力を上げるため」だと考えます。企業行動を縛るガバナンスがあるからこそ、企業はその縛りを乗り越えて利益を上げようとします。そうすれば経営力は格段に向上し、企業はさらなる高みに上って行けるわけです。逆に、ガバナンスの形骸化を放置し、形は作ったけれども企業運営は事実上、昔のままなら、企業は全く変わりません。

 特集では、ガバナンス制度の導入では先進企業と言われたソニーの業績がなぜ改善しなかったのか、さらには、一時期最終赤字に転落したのを契機にガバナンス制度を一新し、業績のV字回復につなげたニッセンホールディングスの軌跡を辿ることで、「ガバナンス=経営力」を論じています。ぜひご一読ください。

日経ビジネス 2012年3月19日号より