「ペヤング事件」とは、いったい何だったのか

by 坂口 孝則 :調達・購買業務コンサルタント/講演家

(撮影:尾形文繁)

0.00025%の確率が問い掛けた教訓

 0.00025%――。

 はたして私たちはこの数字をどう考えればよいだろうか。あるいは、「0.00000095%」と表現してもいい。この一見すると小さな、しかし、看過できない数字に私たちの意見はまとまっていない。

 前者の0.00025%とは、1日に40万食を生産する食品企業でひとつの不具合が起きた際の確率。後者は、それを年間に換算したとして(1日40万食×月22日×12カ月=)1億0560万食の中でひとつの不具合が起きたときの確率だ。

 マクロに見ると、その発生確率は想像もできないほどに低い。しかし、そのたまたまひとつを手に取ってしまった消費者からすると「1分の1」にほかならない。ホンダの創業者である故・本田宗一郎さんは「1%の不良品率であっても、その1%を買ってしまったお客にとっては、それがすべて」という趣旨のことを述べたことがある。

●わずか10日で売り場から消えた「ペヤング事件」

 インスタント焼きそばの定番商品「ペヤング」を生産している、まるか食品(本社・群馬県伊勢崎市)は、2014年12月、ひとりの消費者がツイッターに投稿したゴキブリ混入の写真をきっかけに、1日40万食の生産を長期間にわたって停止すると決定した。そのペヤングがこの5月に生産を再開、6月8日には再び店頭に並ぶ。

 少なく見ても0.00025%、長い目で見ればさらにもっと低い確率で起きた事故は、まるか食品に何を与えたのか。そして私たちはペヤング事件をどう総括すればよいのだろうか。

 事件を振り返ってみよう。

・2014年12月2日:消費者がツイッターでゴキブリ混入写真を投稿

・同年12月3日:消費者が保健所とまるか食品に連絡、まるか食品は消費者に写真の削除を依頼

・同年12月4日:まるか食品は混入の可能性が低いとしつつ対象4万6000個の自主回収を発表、同時に生産を止める

・同年12月11日:全工場の停止と販売休止を発表、大手スーパーなどが商品を撤去しはじめる

・同年12月12日:流通業者からの返品が殺到する

 わずか10日間で、小売店の棚からペヤングが消えていった。

 まるか食品には本社工場と赤堀工場がある。今回問題となったのは本社工場の生産物だった。対象商品は「ペヤングハーフ&ハーフ激辛やきそば」と「ペヤングハーフ&ハーフカレーやきそば」の2種類だったものの、全国販売中だった24種類の商品の停止も決めた。品質上の問題はなしとしながらも、混乱を避けるためだった。