企業不祥事(その6)(日本取引所「不祥事対応プリンシプル」、PCデポ問題、「食べログ」炎上) [企業経営]

企業不祥事については、8月31日に取上げたが、今日は、(その6)(日本取引所「不祥事対応プリンシプル」、PCデポ問題、「食べログ」炎上) である。

先ずは、弁護士の山口利昭氏が8月1日付けビジネス法務の部屋に掲載した「会計不正事件に浸透し始めた日本取引所「不祥事対応プリンシプル」」を紹介しよう。
・定時株主総会が終了したことも影響しているのかもしれませんが、7月下旬になって東証1部上場会社の企業不祥事公表が目立ちます。とりわけ三井ホームさん、住友電設さん、住江織物さん等、老舗企業もしくはそのグループ会社における不適切会計処理事案が目を引きます。それぞれの会社リリースを読みますと「なぜこの程度で過年度決算をしなきゃいけないの?」「なぜ第三者委員会を設置せず、社内調査で済ませようとするの?」「なぜこの時期に公表なの?もっと早く公表できたのでは?」と疑問を抱くところもあるかもしれません。
・おそらく、今年3月から適用されている日本取引所自主規制法人「上場会社における企業不祥事対応のプリンシプル」が、各企業の対応にかなり影響を及ぼしているはずです。企業不祥事の発覚時には、会計監査人との協議とともに、取引所への相談も重要となります。たしかに同プリンシプルは特別な行為規範を上場会社に新たに要求したものではなく、また細かなルールベースで規定されたものではありませんので、従わない場合に何らかのペナルティが取引所から課せられるというものでもありません。
・ただ「会計不正はかならず発見される」という保証はないわけでして、証券市場には実際に「隠れ会計不正事件」は多数存在します。したがいまして、もしプリンシプルの趣旨精神に反するような不祥事対応に終始しておりますと、ステイクホルダーから「この会社はもっと大きな不正を隠しているにちがいない」と安易に推測されてしまうので、これを回避したい不祥事企業へのインセンティブ効果は大きいといえるでしょう。私が昨年から今年にかけて関与した事例のように、最初は資金流用で調査を始めたところ、会社の非協力的な態度が尋常ではないのでさらに追及すると組織ぐるみの粉飾が発見された、という事件も普通に発生しています。
・とりわけプリンシプル対応においては、不祥事発覚時点における調査範囲の決定方法、調査を誰に委ねるか、再発防止策の実効性をどのように担保すれば説得力があるか、といったあたりは最大の課題です。社外取締役や社外監査役さんの有効活用が求められる場面でもあります。私としましても、もう少し時間的余裕ができましたら、ブログでひとつひとつの事例を紹介して取引所プリンシプルがどのように活用されているのか、私なりの解釈を申し上げたいところです。皆様方におかれましても、たとえば上記3社のリリースを参考として、企業不正発覚時における企業の危機対応を学ぶことも有益ではないでしょうか。
http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/2016/08/post-ef74.html

次に、同氏が9月9日付けビジネス法務の部屋に掲載した「PCデポ問題-「社会からの要請」の内容は御社の姿勢次第です。」を紹介しよう。
・8月中旬に高額解約料騒動が報じられて以来、株価が低迷を続けているPCデポコーポレーションさん(東証1部)ですが、いよいよ運用大手が次々と同社株式を売却しています。正直に申しますと、私は同社の対応は速やかだったので、1か月もすれば株価は回復するのではないかと予想していましたが、そんなに甘くはなかったようです。
・認知症の高齢者の方に対して、解約手数料20万円を請求した(最終的には10万円に減額した)、という事実の「不適切さ」もさることながら、おそらく同社の高齢者サポートビジネスへの懐疑的な見方が広まった(知られてしまった)のかもしれません。月額契約料のほかに、高額の解約手数料をとらなければ、そもそも手厚いサポートを維持する費用を捻出することができないと思われますし、その点が世間で明らかになると、今度は契約者間における不公平感が解約への誘因になっているのではないでしょうか(「俺が払っている月額契約料は、ごく一部の契約者の利便性のためだけに使われているのか?」といったこと)。今後、同社の対策が奏功して株価が上昇するのか、注目しておきたいところです。
・しかしPCデポ騒動をみるに、今回ほどSNSの脅威を感じた不祥事はなかったのではないでしょうか。SNSの脅威といえば、過去にもリコール対応の杜撰さが暴かれた事件や「おバカ投稿」が拡散して企業が謝罪するような事例はありましたが、株価が半減して戻らないといった、まさに企業価値を低下させるきっかけとなった事例はあまり記憶がありません。コンプライアンスは「法令順守」ではなく、「社会の要請への適切な対応である」とは言われますが、まさに社会の要請に対して同社が(これまでのところ)対応できていなかったといえます。
・大きな不祥事を起こしてしまった企業が、よく「世の中の風を読み間違えた」と釈明することがありますが、私が危機対応の実務で感じることは、「世の中の風」といったものは、どこの企業にも同じように吹いているものではなく、御社次第で風の向きや風の強さは変わるということです。「割れ窓理論」というものがありますが、人は誰も手入れをしていない割れ窓の空家では、土足で立ち入り、平気でごみを捨ててしまい、その結果不正発生率も高まります。しかし手入れが行き届いている家の前では道徳心が発揮され、その結果として不正発生率は下がります。まさに「性弱説」の発想です。同じ不祥事を起こしても、平時から示している顧客に対する接し方や有事における不祥事対応が異なれば、同じ顧客でも別の顔を見せるのは当然です。
・御社に吹く世間の風も、御社が世間に対してどのような姿勢で臨むかによって変わります。マニュアルのような「クレーム対応の手引き」だけに頼って、その顧客をクレーム客に仕立ててしまった要因に目を向けなければたいへんなことになります(すべてとは申しませんが、普通のお客様をクレーム客に仕立てているのは御社の姿勢かもしれません)。「顧客のために」と言いながら、実は自社の利益優先の行動に出ていれば、それなりの風が吹きます。「顧客の視点で」事業を遂行していれば、同じ顧客でもまったく別の顔を御社に向けてくれます。このことがよくわかっておられない会社がとても多いと痛感します。コンプライアンス経営の基準となる「社会の要請」は、もちろん時代によっても変わりますが、御社の姿勢によっても変わるということは肝に銘じておいたほうがよいと思います。
http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/2016/09/post-3bf9.html

第三に、9月9日付け日刊ゲンダイ「炎上で株価暴落 「食べログ」の評価点数は信用できるのか」を紹介しよう。
・グルメ情報サイト「食べログ」が評価点数をめぐって炎上している。7日に株価は一時、年初来安値を更新する事態になり、運営するカカクコムは“火消し”に大わらわだ。
・コトの発端は、6日、ワインバーの経営者がカカクコムの営業マンとのやりとりをツイートしたこと。 【全店の食べログスコアがいきなり3.0にリセット。そこに担当営業から連絡が来て『食べログのネット予約を使ってもらわないと検索の優先順位を落とします』と】
・評価点数や検索順位をちらつかせた「ネット予約」の営業のようにも見える。ネット上では「公平性がないなら見る価値なし」「恐喝だ」、店選びの基準になる評価点数が歪められているのではないか、とネット住民から一斉に批判されているのだ。同社広報室に聞いた。 「当社のネット予約をご利用いただくと広告枠の標準検索結果で優先表示されるという案内をしました。食べログの店舗向け集客サービスの契約内容などを理由にスコアを変更するような事実は一切ございません」。営業の対応に問題はなかったのか、との問いに対しては「受け手側の見解もあるのでコメントは控える」という回答だった。
・またしても「誤解、ネット炎上、株価暴落」のパターンだ。口コミと評価点数をウリに「食べログ」は急成長。昨年度の同事業の売り上げは157億円で11年度の25億円の6倍だ。月間7000万人以上がサイトにアクセスしている。ITジャーナリストの井上トシユキ氏はこう言う。 「食べログの評価点数は信頼度を加味した独自のアルゴリズムですが、詳細が開示されておらず、信頼性はよくわかりません。ネットの評価点数や投稿は素人が受け止めた印象だし、店側のやらせも排除できない。最近は実名で投稿するグルメサイトもありますが、こちらも、実名だから100%信用できるというわけではない。実名だから言えないこともあります。ネットの情報は『いい評価が多そうだ』程度に活用すべきで、信用してはいけません」
・信頼できるのは自分の舌ということか。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/189554/1

「不祥事対応プリンシプル」」については、ルールにすると膨大で硬直的になる懸念があるため、プリンシプルにしたというのは妥当なところだ。金融庁が、プリンシプル・ベースとルール・ベースを組み合わせた金融監督を目指しているのを、日本取引所自主規制法人(昔の東証)が受けて制定したものと思われる。これまでは、名ばかりの第三者委員会などもあったが、今後はプリンシプルが不祥事対応の骨格を規定していくことになるのだろう。お粗末な不祥事対応がなくなることを期待したい。
PCデポの株価は9月上旬からさらに下落している。『同社の高齢者サポートビジネスへの懐疑的な見方が広まった(知られてしまった)のかもしれません』、ということなのだろう。高齢者向けというのを当初はニッチと思ったのが、十二分な説明責任が求められるリスクを孕んでいた、ということなのかも知れない。『マニュアルのような「クレーム対応の手引き」だけに頼って、その顧客をクレーム客に仕立ててしまった』、との指摘も大いに反省すべきだろう。
私は「食べログ」のようなものは、もともと信用してないが、『評価点数や検索順位をちらつかせた「ネット予約」の営業』に近いものが行われていた、とはひどいものだ。これまで炎上しなかったのがむしろ不思議なぐらいだ。『ネットの情報は『いい評価が多そうだ』程度に活用すべきで、信用してはいけません』、との指摘はその通りだ。
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