~株主総会の危機管理:2015~(上) 本年3月度の株主総会の質問内容を踏まえた株主総会対策

2015/05/07 / 総合研究室 主任研究員 西尾 晋 プリント

 いよいよ5月に入り、6月に株主総会を開催する企業においては、計算書類の内容も確定し、株主総会の議案についての最終的な詰めに入る時期となった。それに伴い株主総会対策もいよいよ佳境に入ることになるが、当社のコラム、「SPNの眼」でも、毎年、この時期は株主総会ネタで固まりつつある。

 その意味では、毎年恒例の連載となるが、新規に上場した企業も増えているし、株主総会の担当が特に若手に交代したという会社も少なくないことから、今年は、今年の株主総会の動向等も交えながら、一部前年までの内容との重複を厭わずに、株主総会の危機管理対策のガイドライン的に記載していくことする。

 5月、6月の2回に分けての掲載を予定しているが、第一回目の今回は、3月に行われた株主総会での質問事項と社会情勢を踏まえ、本年の株主総会で質問等が考えられるトピックスについて、解説していきたい。

1.本年3月度の株主総会の質問内容を踏まえた株主総会対策

(1)3月総会でみられた質問

 配当方針や事業の見通し、新規事業の内容等の通常の株主総会で出される通常の質問が大半であったが、会社法の改正に絡む質問(特にコーポレートガバナンスのあり方やコーポレートガバナンス・コードに関する内容)(3月総会の会社の場合は、実質的には来年の総会前までの対処課題と言えるが)、そして個人情報の管理態勢や漏えいリスク対策に関する質問もあった。

(2)株主総会に関する質問の傾向

 企業の事業活動等に関する重要な法改正が行われた場合には、その改正事項への対応計画や事業への影響を含めて、法改正に絡む質問が多くなる傾向にある。

 本年については、特に外資系機関投資家の関心が高いコーポレートガバナンスも絡む会社法改正、それに関係する【日本版スチュワードシップ・コード:「責任ある機関投資家」の諸原則~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~】や【コーポレートガバナンス・コード原案~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~】など、関連する指針も公表されており、会社法改正や開かれた総会、株主との対話などに関する事項に関して株主の関心も高く、株主総会においても質問が寄せられるものと考えられる。

 なお、法改正絡みであれば、マイナンバー制度の施行を控えての個人情報保護法の改正、50人以上の企業に対して従業員のメンタルチェックの実施を義務付ける労働安全衛生法の改正等、話題性の高い法改正もあり、それに絡む質問も予想される。

 また、大きな企業不祥事等があった場合には、関連する事項についての質問が株主総会でもなされる傾向にある。その意味では、昨年の大型の個人情報漏えい事件や異物混入事案、その他の企業不祥事やそれを巡る企業の危機対応など、株主の関心も高く、業種的に近接する企業においては、関連する質問等が寄せられる前提での対策が重要となる。個人情報漏えいについては、法改正とも絡む内容だけに、情報管理全般に広げた上での現状の把握や想定問答を準備しておくことが望ましい。

2.会社法の改正を巡る状況と留意点

(1)総説

 本年の会社法改正は、グループ内部統制システムに関する内部統制基本方針の策定(招集通知記載)や社外取締役の選任の在り方に大きく影響を及ぼす監査等委員会設置会社への移行、関連分野では、「コーポレートガバナンス・コード」を踏まえた開かれた総会への対応(これについては、株主総会招集通知の英訳等に触れられているが、当社の株主総会に関するオープンセミナーでも、株主総会開催時における通訳の問題については既に示唆していたが、企業としては、具体的な対応を迫られることになる。)、あるいは、有価証券報告書への女性役員の比率の明示(内閣府令)等、企業が取り組まなければいけない事項が多い。

 ガバナンスに関する組織体制(会社法関連)や考え方(コーポレートガバナンス・コード)は機関投資家が非常に強い関心を示す部分である。ガバナンスのテーマに経営支配権の争いまで含めれば、大塚家具の株主総会のような委任状の勧誘合戦が繰り広げられ、それに絡んで、従来のような配当方針や事業戦略だけではなく、ガバナンスに絡む組織体制の変更やコーポレートガバナンス・コードへの準拠により、「開かれた総会」「株主との対話・協調」に絡む事項も含めた株主提案・委任状勧誘が行われることになってくるであろう。そうなれば、より合理的かつ株主本位のガバナンスのあり方に大きな関心が集まることになる。まさに大きな意味でのガバナンスの在り方が委任状勧誘の帰趨を左右する状況が今後より鮮明になるものと思われる。

 そして、さらに子会社の内部統制システムの整備に関する事項の決定・明示も会社法本文に格上げされたことも考え合わせると、組織体制やルールをどうするかという形式的な部分も然ることながら、より実質的なグループ全体でのコーポレートガバナンスそしてそれに基づく内部統制システムのあり方、実効性が問われることになってくる。

(2)コーポレートガバナンス・コードに関して考えられる留意事項等

 金融庁の「コーポレートガバナンス・コード原案~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」(コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議・平成26年12月)(以下、「コーポレートガバナンス・コード」)の内容も、本年の総会では注目が集まるであろう。

①「株主の権利・平等性の確保」に関しては、【基本原則1】として、「少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分に配慮を行うべき」としている。

 中でも、【原則1-2.株主総会における権利行使】では、「上場会社は、株主総会が株主との建設的な対話の場であることを認識し、株主の視点に立って、株主総会における権利行使に係る適切な環境整備を行うべきである」として招集通知の英訳を進めるべき旨提言している。権利行使に係る環境整備という観点で考えると、招集通知の英訳もさることながら、外国人株主が通訳帯同で株主総会に出席することへの対策も不可避であろう。

 この点については、当社の株主総会関連セミナーの中でも、通訳や株主高齢化に伴う介助者が議場に入ることを想定した対策(帯同者は議決権が行使できないことの明確化)の必要性を既に説明していたが、この点に関する具体的な対策も必要になることを意味する。通訳の帯同・入場を認めないのであれば、会社側で通訳を用意し会場内に待機させておくことも視野に入れるべきである(株主総会での質問は日本語に限る旨は株主に告知していない企業が多いであろう)。英語を話せる議長が外国人株主からの質問に直接答弁できたとしても、他の英語が分からない株主でもその内容を知ることができるようにするとすれば、やはり通訳による翻訳が必要になってくる。

 また、コーポレートガバナンス・コードでは、権利行使に係る適切な環境整備と言うことで資本政策の基本方針や政策保有株式、買収防衛策、増資・MBO等の株主の支配権の希釈化につながる資本政策等について、具体的な説明や十分な説明を求めていることから、想定問答においても平易な言葉での回答案の作成が必要になる。

②「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」に関する【基本原則2】では、株主以外のステークホルダーとの適切な協働に努め、経営陣はこれらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきとしている。

 【原則2-2.会社の行動準則の策定・実践】では、「取締役会は、行動準則(倫理基準・行動規範)の策定・改訂の責務を担い、これが国内外の事業活動の第一線にまで広く浸透し、遵守されるようにすべきである」としており、行動基準や倫理規範の内容や周知状況に関する質問も想定しておかなければならない(名指しで、行動規範を暗唱することを求める株主が出てきてもおかしくない)。当社の株主総会に関するコンサルティングでは、以前より、想定質問として会社の行動基準や行動規範に関するものを企業側に提供したり、リハーサルで質問したりしているが、まさにそのような対策も今後は必要になってくることを改めて留意いただきたい。

 また、【原則2-4.女性の活用を含む社内の多様性の確保】では、「社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは、会社の持続的な成長を確保する上での強みとなり得る、との認識に立ち、社内における女性の活用を含む多様性の確保を推進すべきである」としている。

 これまでは、株主総会においても、事業運営上のリスクや個別事業におけるコンプライアンスに関する質問を視野に入れた想定問答の作成に力点が置かれてきた。しかし、子会社の内部統制システムの整備や内部統制システムの運用の概要の報告が求められるようになったことを考え合わせると、各現場における内部統制システムの実効性を確保できるコーポレートガバナンスの構築を要請するものと理解できるから、業務運営上のリスク管理に加えて、組織要因に絡む危機管理、組織運営上の危機管理の充実が問われていると言い換えることが出来る。

 昨年の論考でも指摘したように、株主の多様化により、OB社員や元社員が株主総会に参加し、暴露的な内容の質問をしたり、経営陣に物申したりする場面も増えてきているが、組織要因に絡む危機管理、組織運営上の危機管理に対する対策は、このような株主による質問等への対策としても重要になってくる。経営陣の争いのみならず、社員間での派閥やトラブルを推察される事態は、開かれた総会やガバナンスが焦点になる株主総会においては、マイナス要因になる。事件は現場でも起こる以上、今後は不祥事発生のメカニズムや組織内で起こり得る人事・労務に絡むコンフリクト、あるいは労働法制の動向を視野に入れた抜本的な組織要因に関する危機管理対策が求められているのである。

 本年4月の会員企業向け定例セミナーにおいて、弊社執行役員の高森が各地で講演させていただいた「労務クライシスへの対応」こそ、組織要因に絡む危機管理、組織運営上の危機管理に関する中心的なテーマとして、企業不祥事の組織的要因の提言や内部統制システムの実効性確保、「開かれた株主総会」を見据えた企業危機管理上の重要課題と言えるのである。コーポレートガバナンスに関する経営管理体制や社外役員、役員に関する話題(選任候補含む)、取締役会の運営状況などの項目だけではなく、各種の人事・労務トラブルに絡む社内の事案を押さえて想定問答を準備しておくことが重要になることは言うまでもない。内部告発的な質問も考えられることを踏まえると、内部通報窓口やセクハラ窓口等に寄せられたハラスメント等に絡む通報やその他事例なども洗いだし、想定問答を準備しておくことが望ましい。

 なお、この点に関連して、労働安全衛生法の改正により本年12月からストレスチェックが義務化されることを受け、コンプライアンスの文脈でも組織要因に絡む危機管理、組織運営上の危機管理が不可避になることを指摘しておきたい。ストレス要因になり得る組織的要因に関する危機管理(リスク管理)が「業務の適正を確保するための体制」として、内部統制システム上も不可欠な要素になり得るものと考えておかなければならない。特にうつ病での退職者や自殺者が出た職場、あるいは退職率の高い職場、ブラック企業の風評の立つ会社などは、抜本的な対策について株主総会で説明する、あるいはその対策(内部統制システム)に関する運用状況の報告まで見据えた危機管理が今後は一層重要になるのである。

③ そして、これらとの関係で留意しなければいけないのが、【原則2-5.内部通報】である。コーポレートガバナンス・コードにおいては、「上場企業は、その従員等が、不利益を被る危険を懸念することなく、違法または不適切な行為・情報開示に関する情報や真摯な疑念を伝えることができるよう、また、伝えられた情報や疑念が客観的に検証され適切に活用されるよう、内部通報に係る適切な体制整備を行うべきである。取締役会は、こうした体制整備を実現する責務を負うとともに、その運用状況を監督すべきである」としている。したがって、現在社内に設置されている内部通報制度に関する実態の把握や改善課題の検討、そしてそれを踏まえた想定問答の作成が重要になる。

 ここで注意をしなければいけないのは、次の点である。すなわち、内部通報に係る適切な体制整備に関して、「違法または不適切な行為・情報開示に関する情報や真摯な疑念を伝えることができるよう」にすることを要求していることである。具体的に言えば、違法又は不適切な行為のみ対象とする内部通報窓口以上のものを求めていることである。現在の自社の内部通報の実情が、どのようになっているか、今一度検証しておかなければならない。

 また、内部通報に係る適切な体制整備に関して、「伝えられた情報や懸念が客観的に検証され適切に活用されるよう」にすることも求めている。「客観的に検証され活用される」ことを前提としているから、内部通報窓口がそもそも適切に運用されていなければならないし、企業側の対応が、情報や疑念を客観的に検証・活用するものでなければならないとされているのである。往々にして運用が甘くなりがちな自社運営の内部通報窓口については、この点の検証も重要であるし、客観的な検証と言うことであれば、その状況や結果を場合によっては株主に説明することも求められる可能性があることを視野に入れておかなければならない。

④「適切な情報開示と透明性の確保」に関する【基本原則3】では、経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきであり、そうした情報が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきであるとしている。

 また、該当部分の考え方として、「定性的な説明等のいわゆる非財務情報を巡っては、ひな型的な記述や具体性を欠く記述となっており付加価値に乏しい場合が少なくない、との指摘もある。取締役会は、こうした情報を含め、開示・提供される情報が可能な限り利用者にとって有益な記載となるよう積極的に関与を行う必要がある」とも記載しており、リスク情報等の非財務情報の積極的な情報開示を強く求めている姿勢が見てとれる。

 現状においては、株主総会参考書類(招集通知)において、対処すべき課題等には言及してはいるものの、具体的な対策や進捗、対応計画等が書かれているわけではなく、リスク管理の状況やレベルについて、株主に対する情報提供として不十分との指摘は看過できない。

 少なくとも、株主総会においては、経営課題やリスクに関する情報、現状、対応計画等について、より具体的な説明を求める質問があることを想定し、上記趣旨を踏まえた相応のレベルの回答を準備しておくことが望ましい。この部分に関しては、監査役会による外部会計監査人に対する対応や実効的な監査体制の確保に向けた対応を取締役会や監査役会に求めていることから、特に監査役が相応の説明が出来るよう十分な準備が必要であろう。

 この点についても、当社の株主総会コンサルティングにおいて集中的に想定質問等で指摘してきた部分であるが、今後、企業としての危機管理に関する情報開示が一層重要になることは言うまでもない。

⑤取締役会の責務に関する【基本原則4】では、経営幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと、独立した客観的な立場から、経営陣・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと等についての役割・責務を適切に果たすべきことを提言している。この「取締役会の責務」に関する項目は、コーポレートガバナンス・コードにおいて最もページを割いている部分であり、細則も14項目に上っている。

 内容としてはコーポレートガバナンスの充実に関するものが多いが、取締役会のバランスや資質に関する【4-11.取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】(「取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである」「取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきである」としている)や、【原則4-12.取締役会における審議の活性化】(「自由闊達で建設的な議論・意見交換を尊ぶ気風の醸成に努めるべき」として、「取締役会の資料が、会日に十分に先立って配布されるようにすること」「審議時間を十分に確保すること」等を例示している)、【原則4-13.取締役・監査役のトレーニング】(「新任者をはじめとする取締役・監査役は、上場会社の重要な統治機関の一翼を担う者として期待される役割・責務を適切に果たすため、その役割・責務に係る理解を深めるとともに、必要な知識の習得や適切な更新等の研鑽に努めるべきである。このため、上場会社は、個々の取締役・監査役に適合したトレーニングの機会の提供・斡旋やその費用の支援を行うべきであり、取締役会は、こうした対応が適切に取られているかを確認すべきである」としている)等については、企業にとっても非常に盲点となっていると思われる項目であろう。

 当然、本年以降はこのような事項に関する質問も想定されることから、選任候補者に関する説明責任の範囲も含めて、取締役会としての運営、実効性確保に関する想定問答の準備も不可欠と言える。

3.その他に想定しておくべき事項

① 情報管理体制に関する質問

 既に記述した通り、企業不祥事発生後は、当該事案に関する報道等の影響を受   けて、関連する質問がなされる傾向にある。その関係で注意を要するのは、個人情報の管理、及び個人情報を含む情報の管理態勢や漏えいのリスクに関してである。

 主要事業でのトラブルや事故への対応、あるいはそれに関連するコンプライアンスについては、各企業は相応の対策を行っていると思われるし、情報セキュリティについても各社相当程度の対策が取られていると思われる。しかしながら、委託先等の管理や委託先の個人情報の取扱い状況の把握、委託に伴うリスクなどの部分では契約条項等による紳士協定的リスク対策になってしまっている企業が多いのではないだろうか。

 個人情報漏えい事案の発生が、企業の業績に大きな影響を及ぼすことは、昨年発生の個人情報漏えい事故で広く社会で認識された。株主としては、事故発生による巨額の損失や株価下落による不利益を被りたくない心理が働き、現在の各社の個人情報管理体制や漏えいリスクなどについて、かなり踏み込んだ質問をしてくることも想定しておかなければならない。

 また、個人情報管理体制に不安がある状態では、より機微な情報となるマイナンバーの取扱いや営業秘密情報の取扱い、情報漏えいの危険性もあり、また機微情報であるからこそシステム導入を含めた情報管理体制の整備が急務になることから、その費用支出や体制整備計画に関する質問も考えられる。

② 海外での事業活動に関する質問

 イスラム国によるテロ行為が発生し、特に欧州、中東地域においては、同エリアでの事業活動にも大きな影響が出かねない状況である。テロによる事業継続リスクが顕在化しており、現地に駐在している日本人の安全確保を含めて企業としては安全管理体制構築に伴う費用支出、安全確保の見地からの事業の縮小など、業績にも大きな影響が及びかねない状況であることから、海外における事業活動に伴うリスク管理に関する質問も想定される。

③ 従業員のストレスチェック義務化への対応

 本年の法改正に関わる一つの目玉として、労働安全衛生法の改正による50人以上の従業員を擁する企業に対する従業員のストレスチェックの義務化がある。これにより職場におけるストレスが具体的に把握されることになるが、それに伴い各組織の組織傾向や人事・労務管理体制に関心が寄せられることになる。

 同制度の導入に伴う人事・労務管理体制の変更等に関する質問、人事・労務管理の在り方や各種ハラスメントに関する社内の発生状況などについても、特に元社員(OBやリストラされた社員、トラブルで辞めた社員)等からの質問も想定される。昨今、社内労働組合組成の動きも出始めてきており、また社内労働組合がある企業においても、メンタルチェックの義務化による不利益への対応など、非常に関心が高いテーマであると言える。

 また、これに関連するテーマでもあるが、女性の社会的地位の向上促進や管理職への登用促進の社会動向を受けて、マタニティハラスメント(マタハラ)の問題も顕在化してきている。マタハラについては、セクハラと同様の構図の他、女性社員の優遇等に対するあてつけなどもあると言われており、非常に根深い問題を抱えているが、女性の多い企業については、マタハラへの取組み等に関する質問も想定しておかなければならない。

 以上、本年第一回目の株主総会における危機管理に関するSPNの眼については、会社法の改正やコーポレートガバナンス・コードへの対応を中心に、6月総会において想定される質問について検討してきた。ここまでの考察を通じて見えてくることは、事業活動に伴うコンプライアンスやコーポレートガバナンスに関する従来からのテーマはもちろん、組織要因に起因する危機管理対策がより重要になってきており、株主総会においてもそれに対する関心が今後一層高まってくるであろうと考えられることである。

 開かれた総会、株主との対話が重視されているからこそ、様々な株主が株主総会に出席することを前提とした対策がより重要になってくる上、株主総会の危機管理対策に留まらない、そもそもの企業活動に関する危機管理を実施・継続していくことが強く求められるのである。株主総会の危機管理をいかに充実させても、企業の経営幹部や組織内部に問題があれば、株主総会が荒れるのは必至である。砂上の楼閣は、どんなに外側を飾っても足元を固めない限り崩れ去ってしまうのである。