医療事故8、金沢大学病院少女死亡事件で教授ら不起訴
       ~司法が適正に機能する場合と適正に機能しない場合



 心機能が大幅急低下した後の少女に、抗癌剤アドリアマイシン(心機能異常では禁忌)とカフェインの併用療法を再開し、アドリアマイシン心筋症による心不全を発症して死亡し、教授ら医師3名が書類送検された件で、金沢地方検察庁は2015年10月9日(金)、10月7日付で不起訴処分にしたと発表しました。


1、北陸中日新聞2015.10.10
   「金大教授ら3人不起訴 金沢地検 化学療法 少女死亡で」

http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20151013135326003

 金沢大病院(金沢市)で骨肉腫の少女=当時(一六)=に過度の化学療法を続けて死亡させたとして業務上過失致死の疑いで五十代の整形外科教授ら男性医師三名が書類送検された事件で、金沢地検は九日、三人を不起訴処分にしたと発表した。遺族側弁護士によると、理由は嫌疑不十分。

 処分は7日付。教授のほか二人は、当時担当医と研究医だった、いずれも四十代の男性医師。

 県警などによると、三人は二〇〇九年十月、入院していた当時高校一年の少女に、抗がん剤の効果を高めるためにカフェインを併用して投与する「カフェイン併用化学療法」を開始。翌一〇年一月中旬の検査で少女の心機能が低下し、抗がん剤の副作用による心筋症が疑われたのに化学療法を止める注意義務を怠り、一〇年三月に死亡させたとして十四年一月に書類送検された。遺族が十二年に告訴していた。

 地検の尾関利一次席検事は九日、理由を「起訴するに足りる証拠が集まらなかった」とコメントした。

 カフェイン併用化学療法をめぐっては、本来必要な臨床試験の症例登録をせず治療を実施するなど倫理指針違反が判明。金沢大は今年三月、今回不起訴になった教授ら計四人に対し、文書訓告などの処分をした。金沢大病院は調査委員会を設けて、少女の死亡と治療の因果関係を調べている。

 並木幹夫・金沢大病院長の話  (不起訴処分を)謙虚に受け止め、今後も大学病院としての使命を果たしていきたい。

過失捉え方不当」遺族側弁護士
 整形外科教授ら三人を不起訴とした金沢地検の判断について、遺族側の弁護士は九日、「過失の捉え方が一面的で不当」と批判した。

 告訴状などによると、三人は少女に対し、二〇〇九年十月から翌一〇年一月にかけて、抗がん剤(アドリアマイシン)に強心利尿薬のカフェインを併用投与する化学療法を計五クール実施。一クールは三日間でこの間に数回投与する。

 同月中旬の検査で心機能が低下し、アドリアマイシン心筋症の疑いが検査報告書に明記されたが、二月中旬に六クール目の化学療法を行った。同十九比にアドリアマイシン心筋症による急性心不全となり、翌三月に死亡した。

 弁護士は地検から「抗がん剤投与を中止すべきだったとは言い切れない」などと説明を受けたと明かし「仮に中止しなくてよかったとしても、心臓にダメージを与える次の投与をする際には慎重を期すべきだった。検査も行わずに漫然と投与しており、注意義務を怠ったのは明らかだ」と批判する。

 弁護士によると、不起訴の判断を受けて遺族は大きなショックを受けており、今後の対応は決まっていないという。
<引用ここまで>


2、上記記事の「金沢大病院は調査委員会を設けて、少女の死亡と治療の因果関係を調べている。」について

 金沢大学公表の最終報告書(2014年12月26日付)の第7ページ下からに、
「平成22年3月に、抗がん剤のアドリアマイシンの副作用である心筋症で死亡するという事態が発生した。」
と明記されており、アドリアマイシン心筋症での死亡、すなわち、治療に起因する死亡であると(治療と死亡の因果関係があると)、既に結論が出ています。
http://web.hosp.kanazawa-u.ac.jp/oshirase/houkokusyo20141226.pdf

 従いまして、なぜこの治療に起因する死亡が避けられなかったのか、特に、手術で悪性腫瘍の除去が成功し画像診断で遠隔転移が認められなかった本件で、心機能が大幅急低下していたことが検査で判明した後に、なぜ、心臓に悪影響が無い又は少ない代わりの抗がん剤ではなく、心機能異常では禁忌のアドリアマイシンの投与を続けたのか(使用確認試験実施計画には、イホマイド、エトポシド、カフェインを3週間ごと6コースという、代替抗がん剤のセットが明記されていた)、などの解明が待たれます。


3、日本の司法や金沢大学以外の国内事件等についての情報を幾つか

 今回の不起訴処分の適否については、本記事ではコメントを控えますが、日本の司法や金沢大学以外の国内事件等について、次のような情報があります。

●「日本の人権保障は遅れている」刑事司法は中世のもの?国際人権NGO事務局長が語る「課題」とは(ハフィントンポスト2013.12.9)
http://www.huffingtonpost.jp/2013/12/09/human-rights-issue_n_4410716.html

●神戸地裁で焼身自殺図る(共同通信2010.5.26)
http://www.47news.jp/CN/201005/CN2010052501001153.html

●医療事故内部告発の医師に対して、名誉毀損で賠償命令
 (医療の良心を守る市民の会「日本医大問題を知るために」)
http://ryousin.web.fc2.com/2.html

●瀬木比呂志氏の2著書(著者は裁判官経験30年以上の明治大学法科大学院教授)
『絶望の裁判所』(瀬木比呂志著、講談社現代新書、2014.2発行、821円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4062882507
『ニッポンの裁判』(瀬木比呂志著、講談社現代新書、2015.1発行、907円)
http://www.amazon.co.jp/ニッポンの裁判-講談社現代新書-瀬木-比呂志/dp/4062882973

   瀬木比呂志氏の情報(ウィキペディア)
   https://ja.wikipedia.org/wiki/瀬木比呂志

 これらの2冊は、国連で中世の司法と揶揄された刑事司法をはじめ、行政訴訟や司法の様々な面での絶望ぶりを、裁判官を30年以上務めた著者自身の経験や司法業界内の情報も含めて、実例を示しながら具体的に解説するとともに、日本の司法の構造問題にも言及しています。
 2冊の中の見出しから幾つかご紹介します。

『絶望の裁判所』の見出しより
よい裁判官は最高裁には入れない?
「檻」の中の裁判官たちー精神的「収容所群島」の囚人たち
裁判所による取材統制と報道コントロール
裁判官の官僚化の歴史とその完成
誰のため、何のための裁判?—あなたの権利と自由を守らない日本の裁判所
統治と支配の根源はアンタッチャブル
及び腰と追随の民事裁判
和解の強要、押しつけ
現在の制度ではよい裁判は望めない
心のゆがんだ人々—裁判官の不祥事、日常的なハラスメント、裁判官の精神構造とその病理
今こそ司法を国民、市民のものに

『ニッポンの裁判』の見出しより
裁判官が法をつくるー裁判官の価値観によって全く異なりうる判決の内容
裁判をコントロールする最高裁判所事務総局
統治と支配の手段としての官僚裁判—これでも「民主主義国家の司法」と呼べるのか?
「超」絶望の行政訴訟
刑事司法と並んで権力寄りの姿勢が顕著な行政訴訟
住民が勝っても首長の債務は帳消し!—唖然、呆然の最高裁「債権放棄議決是認判決」
訴訟類型と裁判官によって結論の分かれる国家賠償請求訴訟
裁判官の質の信じられない劣化
和解のテクニックは騙しと脅しのテクニック?—国際標準から外れた日本の和解とその裏側
裁判官の孤独と憂鬱
司法が変われば社会が変わる
最高裁判所という「黒い巨塔」の背後に広がる深い闇


4、司法が適正に機能する場合と、適正に機能しない場合

 国内で司法が適正に機能する場合と、適正に機能しない場合があることは、諸情報より明らかです。

 もちろん、正義感から公正・公平な審理に尽力されている裁判官やその他の司法関係者も多くいらっしゃるでしょう。
 しかし、その一方で、上記の瀬木氏の著書では、裁判官の置かれている環境が「収容所群島」と表現されている状況などからトンデモ判決を書いたり、判決を書かずに当事者に和解協議(非公開)を求め続ける例も少なくないことなどが、記されています。

 上記の瀬木氏の2冊にもある通り、絶望ぶりは行政訴訟や刑事司法、国家賠償訴訟(国や公共団体相手の損害賠償請求)などで特にひどいようです。

 次いで、大企業、国などから独立した法人格となった国立大学(大学幹部個人等も含む)やその他の独立行政法人等、病院・医師などが相手の事件で、司法に「絶望」する事件の割合が多いように見受けられます。


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<時系列(金沢大学病院少女死亡で教授ら書類送検)>
2009 カフェイン併用化学療法を受けるため金沢大学へ転院(治療成績の誇大報告が2015年に判明)
 ●医療維新2015.6.5(過大報告) http://ameblo.jp/jpmax/entry-12043172157.html
 ●http://ameblo.jp/jpmax/entry-12041590691.html
2010.1.22 心機能の大幅急低下が判明し、検査結果報告書に「アドリアマイシン心筋症でしょうか」
 ●次の右上と左上の画像http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12068013758.html
2010.1.29 発見されていた腫瘍を手術で除去。画像診断でも遠隔転移は認められなかった。
 ●次の左下画像http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12068013758.html
2010.2.18 投与再開、翌日の投与中に心不全症状を認め投与中止、アドリアマイシン心筋症と診断
 ●次の左下画像http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12068013758.html
2010.3.2 死亡。退院時確定病名欄は、骨肉腫、アドリアマイシン心筋症、心不全
 ●次の右上画像 http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12073570428.html
2010.3.3 T教授が、最後の投与をしなければ生きていた確率は非常に高いと説明
 ●次の左上画像 http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12073570428.html
2012.7.30 ご遺族がT教授ら医師3名を業務上過失致死で刑事告訴、その後3名が書類送検
 ●http://ameblo.jp/jpmax/entry-12030008532.html
2013.10.1 小川が本件死亡と死亡の未報告を厚労省に通報、翌日ND先進医療専門官がT教授へ漏洩
 ●次の左右画像 http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12070608348.html
2014.4.22 金沢大学が会見で、治療と死亡の因果関係はない旨を発表、大規模な倫理違反を全面に
 ●北陸中日新聞2014.4.23http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20140423064314246
2014.5.23 教授ら書類送検を、北陸中日新聞が1面トップ記事で報道して、明らかに
 ●http://ameblo.jp/jpmax/entry-12030008532.html
2014.9.1 小川が通報漏洩で厚労省(国)とND先進医療専門官を提訴
 ●http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12070608348.html
2014.9.8 金沢大学が記者発表で、新たな調査委員会で死亡事案を調査すると述べた。
 ●http://ameblo.jp/jpmax/entry-12036226098.html
2014.12.18 TBS系テレビが本件死亡、厚労省通報、通報漏洩などを放送、翌朝、朝日新聞も報道
 ●TBS系NEWS23、2014.12.18https://www.youtube.com/watch?v=TfVMP06GSqc&feature=youtu.be
2014.12.26 金沢大学が最終報告書をまとめたが、倫理違反が全面で、死亡経緯は見当たらない
 ●最終報告書 http://web.hosp.kanazawa-u.ac.jp/oshirase/houkokusyo20141226.pdf
2015.6.4 厚労省の先進医療会議で、有効性の過大報告やデータの出し入れなどが問題に
 ●医療維新2015.6.5 https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/327810/
2015.9.18 厚労省は約11日後の死亡が予期したものか否かの回答拒否。
2015.10.6 調査委員会で唯一の弁護士の二木委員は、医療法の届け出義務やカルテ内容と報告書内容のギャップについて、医者じゃないので詳しいことはわからない、病院長に聞いて下さい、と小川に述べた。
同日、IT金沢大学病院部総務課副課長が小川に対して、死亡事案はまだ調査中と述べた。
2015.10.7夜 死亡事案以外の調査委員会のメンバー等を、本ブログ医療事故7で公開。
2015.10.9 金沢地検が、10月7日付で不起訴処分にしたと発表。
 ●北陸中日新聞2015.10.10 http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20151013135326003

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