さらに厄介なのは、不正への動機が高まると、人間は不正行為を「正当化」する。「いまはこうするのが、自分あるいは会社のためだ」と自分で自分を納得させてしまう。

ここまで述べてきた、「動機・プレッシャー」、「機会」、「行為の正当化」の3要素がそろうと不正が起こりやすい。米国の犯罪学者であるドナルド・クレッシー博士が提唱した「不正のトライアングル」という仮説だ。この説は、公認会計士の業務において、不正リスクに対応するためのフレームワークとして世界的に認知されている。日本公認会計士協会は、この仮説を実務指針の中に取り込んでいる。

不正は人が起こすもの。よって、人間の心理を理解しなければ有効な策は打てない。人をどう育成・管理するか、という人事部門の業務にも関係する。不正対策も含めた内部統制には、適切な人事評価および、不正に対する処罰を明確にするなどの制度も肝要だ。

── 従業員などから不正情報を吸い上げる「情報と伝達」の仕組みとして、多くの企業が内部通報システムを設けている。だが、メディアへの告発を発端に不祥事が明るみに出るケースも多い。問題はどこにあるのか。

甘粕 形式的な設置にとどまっている企業がまだ多いのではないか。システムはただの“箱”にすぎない。どう運用するかが肝心だ。従業員が通報しやすくする。さらに、通報された情報を元に、いかに適切な対応をとるか。通報者の身分を保護しながら、通報する側・通報される側双方の調査を行ない、正確な情報を収集しなければならない。

口で言うのはやさしいが、非常にデリケートな対応が必要だ。ここで、間違った対応をしてしまうと、通報した従業員などから悪い口コミが流出。通報システムの信頼性は一気に崩れる。

自社のシステムを信用できないとなれば、従業員が外部メディアへの通報に走るのは必至。ひいては、社会やステークホルダーの信用を失い、企業価値の下落につながる。内部通報システムについても、“仕組み”をつくっただけでは不十分ということだ。

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