(清宮 克幸=サントリーサンゴリアス監督)

今回は、私と選手の間にあった具体的なやりとりを振り返る。実は私は、ある選手に対して、監督して言ってはいけない言葉をいってしまったことがある。決して自慢できるよなことではないが、あえてお話しする。企業でリーダーを務める読者の皆さんも、ぜひ教訓にしてもらえればと思う。

早稲田大学ラグビー蹴球部では、マネジャーのことを「主務」「副務」と呼ぶ。総勢100人を超える大所帯ゆえ、マネジャーも1人や2人では足りない。そこで原則として4年生部員の1人がマネジャーの長である「主務」となり、3年生部員2人がその補佐役として副務に就く。さらに数人の2年生部員が「バイス副務」つまり「副・副務」の役割を担い、これに数人の女子マネジャーが加わるのが通例だった。

これまでの連載で私は「Aチームのメンバーが優秀なだけでは勝てない」ことを伝えてきたつもりでいる。すべての選手が共に戦い、競い合う意識を持ち、成長していかなければ「勝利」はつかめない。主務や副務を担う者たちも、その輪の中にいる。私の監督時代には、彼ら、彼女らもまた、「共に戦う」意識を持って役割をしっかり果たしてくれた。だから早稲田は短期間で強くなることができた。

とはいえ、「いずれAチームで試合に出る可能性の高い選手」は、以前から主務、副務の役割を免じてきた。「試合出場で忙しい上に、マネジャーの仕事をこなすのは無理」という考えからだ。これは早稲田のラグビー蹴球部だけのことではないだろう。

こうなると、「いずれAチームで赤黒ジャージを着て試合に出たい」と願う選手たちにとって、「主務、副務に選ばれる」ことはあまり歓迎すべきことではなくなる。この役目に選ばれることは、すなわち「おまえは試合に出られない」と言われたに等しいからだ。

ここで少し「赤黒ジャージ」の説明をしておこう。これは早稲田が公式戦で着るユニフォームのこと。Aチームのメンバーになれなければ4年間着ることができないものである。もちろん、練習で着ることはない。早稲田に入学してラグビー蹴球部に入部した者ならば、全員が「赤黒ジャージを着る」ことを目指す。

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