不祥事の兆候や原因をデータであぶり出す

植村修一氏

 本連載は、具体的な事例をもとに不祥事とは何か、なぜ繰り返し起こるのかをわかりやすく解説することで、多くの組織が健全に運営されることを目指すものです。その意味で、「他山の石」や「殷鑑遠からず」を生かすための連載です。

 なお、連載で扱ったものについては、事件・事故にせよ、内容はあくまでその時点でのものであり、その後、対応策を講じたり、体質改善に努めている例がほとんどです。現時点で当該組織が同じ問題を抱えているわけではない点を、あらかじめ強調しておきます。

不正を抑止する手段

 「デジタル・フォレンジック(もしくはコンピュータ・フォレンジック)」という、一般には耳慣れない言葉が、最近とくに注目されています(フォレンジックとは、鑑識という意味)。

 デジタル・フォレンジックとは、事件に関係するデジタルデータの調査のことです。仕事でも日常の生活でも、今やパソコンやメールを欠かすことができません。そこでやり取りされた情報はほとんど文書に残らないため、事実の確認や検証作業を行うためには、パソコンやサーバーから情報を取り出すことが必要になります。中には、証拠隠滅のために特別なソフトを使って消去されたものもあり、復元するには高度な技術が必要になります。

 デジタル・フォレンジックは、かなり以前から、警察や検察などによる捜査や鑑識で使われています。例えば2006年のライブドア事件では、消去されたメールの復元・解析が決め手になったと言われ、当時、本社でのパソコン押収やデータセンターへの強制捜査の場面が報道されていました。2012年のパソコン遠隔操作事件においては、当初の警察による不十分なパソコン解析作業が誤認逮捕につながったとされ、後日、より専門的な捜査が行われました。