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その6:不祥事発覚時における広報対応
(5)危機発生の「七つの直」を実践しよう part.4

2016年02月15日

■6.内外に「直報」

何か起こった時、目の前の顧客に訊かれたらどう答えればよいのであろうか? いち早く知らせるべき人たちとは、最も大切な顧客・取引先・地域住民等々心配している人達を初めとしたステークホルダーであって、メディアではない! 

この意識を持つことが大切。しかし、公式には、メディアを通じて社会へ広く公表する......これが基本である。公式見解(プレスリリース)とQ&Aを基に、担当窓口から所管のステークホルダーに対して一人ひとり直接伝達するよう心掛けて、常に情報公開姿勢を貫き的確な対応を行うのである。


「万物の徳を報ぜざる者は、日夜万物の徳を失ひ、万物の徳を報ずる者は、日夜万物の徳を得る」(二宮尊徳『一日一言』)


●メディアに直報

刻一刻の状況を最も知りたがっている人達は、メディアではなく読者視聴者=顧客や遠くの多くの社会の人達だ。その人達に一刻も早く伝えるのは企業としての義務・使命!
本来一人ひとりに伝えるべきだが、同じ事を、同じ時に、多くの人に伝えられないから、巨大スピーカーを持つメディアに協力を仰ぐのだ! 顧客・社会の代表者であるメディアなくして、どうして説明責任(Accountability)が果せよう? メディアは報せる武器であり、客観的な第三者評価機関なのである。

そこでメディアに、正確に言えば、"メディアを通じて社会に"直報し、問い合わせにはQ&Aで回答する。
広報はきちんと伝わっているかよく確認すること! それによって記者を間違わせず、企業の意図に沿った内容・表現にしてもらうよう全力を尽くすのだ。

直報の原則的方法は「一斉発表」である。ただし、「個別対応」で対応する方法もある。
いずれの方法にするかは状況次第だが、発表すべき時にしなければ会社の姿勢が問われる。そこで"意図的遅延"や"隠蔽"と見なされることになる。


「天下の広居に居り、天下の正位に立ち、天下の大道を行う」(吉田松陰)


(1)一斉発表

一斉発表とは、
1.公式に、2.同じ事を、3.同じ時に、4.多くのメディア
に情報開示を行うことである。

なぜ、きちんとした発表=情報開示が必要なのか? 

情報開示3か条とは:
第1条 刻一刻の説明責任を果す:ステークホルダーや社会に一早く現状と対策を報せる
第2条 組織の姿勢を積極的に示す
第3条 自ら率先して社会的責任を表明する

常にこの3か条を念頭に、早め早めのタイミングで先手を打って一斉発表する心掛けが不可欠。
発表は1回では終わらない。状況変化の都度タイムリーに開くこと。
その場合発表者はトップでなくともよい。

一斉発表にも2つの方法がある。
発表者が「レクチャー付発表=記者会見」する方法と、単にプレスリリースを一斉に配布・配信する「資料配布」だ。


発表する場所は、危機発生現場の他、自社や外部会議室やホテルもある。
発表の対象は、記者クラブで発表し、他の多くのメディアに広く発表することもできる。雑誌や地方紙なども含め、どの範囲に発表するかは、発表側の意向で決められる。


【記者クラブとは】
記者クラブは、大手メディアが中心となって構成する任意組織だ。担当記者はクラブに常駐。2、3か月置きに2、3社づつ「幹事社」となり、発表申込の諾否を決める等クラブの運営にあたる。

首都圏や大阪では主要業界ごとに、地方自治体には「県政記者クラブ」や「市政記者クラブ」、商工会議所内に「経済記者クラブ」があり、メディアの取材基地であり企業にとっては発表の場として活用できる。複数の記者クラブで発表する場合にはクラブ名を明記する。日頃から記者クラブと付き合っておくと記者人脈構築にも有効。


発表したい企業は、発表テーマや日時・場所等を幹事社に申込み了承を得る。原則として発表日の48時間前までに申し込むが、トップ交代、M&Aの他、事件・事故・不祥事等緊急時の発表は、当日申込当日発表も幹事社の判断で可能。通常、申込後1、2時間以内に記者会見することになる。
 

【レクチャー付発表=記者会見による発表】
どんな場合に記者会見する必要があるか?

その決断の要素5か条とは:
第1条 会社の姿勢として、公式に記者会見すべきと判断した場合
第2条 記者クラブ幹事社や複数のメディアから開催要求された場合
第3条 顧客や消費者に緊急の注意喚起が必要とされる場合
第4条 誤った風評が流れ公式に説明釈明しなければ、社会をミスリードしてしまう場合
第5条 あるメディアに大きなスクープ記事が出て、会見をやらざるを得ない場合

常に第1条を旨とし早めの決断で企業の意志を率先して示せば、その誠実な姿勢が評価され事態好転のきっかけにもなる。


発表者を慎重に選ぶことが重要だ。
できるだけ上位の人:発表者が誰か、どの役職かによって、その案件に対する企業の姿勢がわかるからだ。さもなくば「こんな大事件なのにどうして社長が出ないのだ」という批判を浴びることになる。

トップが会見すべきときに遅れれば、メディアや社会から強い非難を受け致命的なイメージダウンになろう。最近では、エアバッグ事故のタカタ株式会社や免振偽装事件の東洋ゴム工業株式会社がその典型例である。 

加えて、発表者だけでは、回答できない予測質問に対して、適切な同席者を2、3名選ぶことが大切だ。その時「質問予測力」がものを言う。発表者の心得は後述する。

レクチャー付発表を行う場合は、

(a)発表日時
(b)自社、社外会議室・ホテル等の公共の場所か、現場か等発表場所 
(c)発表者

を慎重に決める。
発表者は、プレスリリース(公式見解書)を基に発表し、Q&Aを基に質疑応答することは言うまでもない。


「立ち向かう人の心は鏡なり おのが姿を写してや見ん」(黒住宗忠)


【資料(プレスリリース)配布・配信だけによる発表】
 資料配布する場合には、発表日時とどの範囲迄発表するか?を決めて、その日時に一斉のプレスリリースを配布・配信する。記者クラブに対して資料配布するのもこの方法の一つで通称「投げ込み」と呼ばれる。その後の問い合わせには、Q&Aを基に広報が個別に対応する。


(2)個別対応
一斉発表せずに、個別対応で乗り切る方法もある。
問い合わせに対し、プレスリリースとQ&Aに従って個別に対応する。
しかし、この場合には、個々の記事のニュアンスがばらつく! 言い方を変えれば、各メディア報道の語尾がより乱れる!ことを覚悟する。

つまり、記事の内容は本来記者の判断に委ねるので、語尾のばらつきはやむを得ないが、個別取材だけの場合は、判断の度合いが大きいので、よりばらつくことになる。
そこで、広報は更によく確認して間違いを防ぎ、企業の意図に沿った内容・表現になるよう努力する。

周知の通り、広告は企業がメディアのスペースや時間を買うことによって企業の言う通りになるのとは全く異なる。

自社のある事件や事故に関する記事が出た場合、他のメディアからの問い合わせに対し、その通り!と

(a)「全面肯定」するのか、
(b)「大筋肯定」か、
(c)「大筋否定」か、それとも
根も葉もないと(d)「全面否定」するのか、
(e)「調査中なので明らかになり次第公表」と回答するのか

を決めなければならない。


「かくすればかくなるものと知りながら やむにやまれぬ大和魂」(吉田松陰『留魂録』)


●関係者に直報

各部は、それぞれ担当する相手先の中で、直接事態を知らせるべき主要な相手先には、公式見解=プレスリリースとQ&Aを基に連絡する。全社が同じ対応することによって外部に「全社の言動が統一されている!」との印象を与えることができる。

・営業部より...顧客へ
・IR部より...株主や投資家へ
・資金部・経理部より...銀行などの金融機関へ
・購買部より...ベンダーや取引先へ
・総務部より...地域住民、警察や消防、中央官庁や地方自治体へ

更に、必要に応じて、複数の媒体に広告で告知し、広く報せる方法もある。

以上のように、どの部署から、いつ、誰がどのように連絡するかは、会社によって異なるにして
も、メディアに出る前から上記アクションを全社的観点から行うことが重要だ。その真摯な姿勢が、信用・名声の下落やブランドイメージの毀損を最小限に抑え、事態を"好転"させるのである。


●社内にも直報

危機の大きさによるが、社内にも周知を図ることが大切だ。
職制を通じて、イントラネットや社内掲示や放送等々によってメディア報道と並行し、時にはその前に知らしめること。

マスメディアで即時に報道、今やインターネットを通じて、誰でも発表と同時に知る時代だ。社内伝達の遅れは、その案件を知らされていない営業部員が顧客や外部の人から教えられ恥をかく!ような無様(ぶざま)な事態を招くことになる。


●自社ホームページに即時アップ

広報は発表と同時にプレスリリースをホームページにアップすることを忘れてはならない。
危機の内容・程度に応じて、顧客や社会の人々に企業として報せたい・報せるべき内容を企業の意志で、公式に、積極的に開示する最もよい手段は自らのウェブサイトである。
会社の情報基地として、常に適切かつタイムリーな情報公開姿勢を貫き実行することだ。


■7.「率直・素直であれ」

簡単そうな上記プロセスだが、実際には切羽詰まった中でこのプロセスを数時間で、ときには1、2時間で行うことは容易ではない。
これら一連のことがスムーズに進むには、悪い情報でも率先して上げ、肩書を問わず自由に異見が言える「素直な雰囲気」、「率直な社風」になっていなければならない。
この率直・素直な社風作りこそが広報の役割。これが長年の伝統となり、ブランドとなって末永く敬愛されるのである。


「至誠にして動かざる者は、未だ之有らざる也」(孟子)

山見 博康