(重複エントリになっていたので修正しました)

(追記あり Jul. 28)

パロマ工業の瞬間湯沸かし器事件の経過を見て,不正改造が発覚した際のメーカーの対応の難しさを感じました。

この事件に関し,法的責任と危機対応の2点について若干考えてみましたので,以下にまとめておきます。

まず最初に法律的な問題ですが,本件でパロマ工業が責任を負う根拠としては製造物責任または不法行為ということになるかと思います。

これらが認められるためには,「通常有すべき安全性」・「欠陥」というか安全配慮義務というかはさておき,少なくともパロマに何らかの法的義務があったことが必要です。

不正改造の事案の場合,一般論として,危険な改造とか部品交換が常態化している場合には,製造者には危険回避のための設計変更や警告・指導その他の措置をすべき法的義務が生じ得ます。そして,その義務の及ぶ範囲は当事者間の関係の強弱とか危険の程度などから決定されることになります。

今回の不正改造がパロマサービスという「資本関係はない」会社によってなされていたとしても,同社製品を継続的に保守管理してきた業者ですから,実質支配があるかどうかはともかく両者の関係は強いと言わざるを得ません。事故の内容も生命に危険がある重大なものですから,仮に過去の事故が本件と関連しており,同種の不正改造についてパロマが従来から把握していたということであれば,同社は設計変更を含めた相当程度の対応をすべき義務があったと認められるように思います。

具体的な同社の対応については,安全装置の部品不足があったとか,リコール基準がなかったという報道から見るとずさんとも言えそうですが,これらの事実はいずれも法律違反にはならないレベルのものなので,これだけでは判断できないかと思っています(不正改造の指示があったのなら論外ですが)。

次にパロマ工業の危機対応についてですが,今回の対応についてはやはり問題があったように思います。

まず,事故発覚当初の14日の記者会見ですが,報道によると,「事故が起きたことは重く受け止め、点検を実施する」といいつつも,「安全装置が働かないよう不正改造されたため、換気不良が発生し事故が起きた可能性がある」として,自社の責任を否定することが中心となっています。

しかし,以前シンドラー社の危機対応に関するエントリでも述べたとおり,最初の記者会見では法的な責任を考えるべきではなく,早急に調査するとの姿勢をまず第一とすべきでしょう。特に日本では,事実確認がないまま責任を否定してもそれほど法的なメリットはなく,むしろ誠意のない対応と取られるデメリットの方が大きいように思います。それよりも,法的責任はともかく自社の製品に関して事故があったということについてお詫びするという姿勢の方が企業価値の毀損を防ぎ得るのではないかと考えます。

パロマの当初の記者会見ではこのような姿勢に欠けたために,自らの責任を否定したという印象だけを残すことになったばかりか,遺族への配慮に欠けるとまで言われてしまいました。結局,同社は18日になって責任を認めて謝罪するに至りましたが,その会見でも経営陣がかばいあっているという印象を与えることになったようです。

さらに,今回のような生命に危険の及ぶ事故については点検,回収が必要となります。今回は特に経産省から点検,回収と相談窓口の設置を指示されていたのですから,ともかくも安全を確保するために点検,回収をするという点を中心に発表すべきでしょう。

ところが実際は,toshiさんもご指摘のように,同社のホームページに点検,回収のお知らせが公表されるまでにはずいぶん時間がかかってしまいました。これによって,同社の危機対応の準備の悪さを印象付けたのみならず,同社製品に対する安全性に疑問をもたれる結果となったのは,企業価値に対する大きな毀損となったはずです。

このような危機対応がうまくいくかどうかは,やはり普段からの準備にかかる部分が大きいように思います。パロマの危機発生前の準備の状況は不明ですが,リスク管理とともに,ケーススタディなどを利用した危機対応の準備をしておけば,もう少し適切な対応が可能だったのではないかと残念に思うところです。

ちなみに,アメリカで同種の事故が起こった場合,不正改造をできないようにする設計変更が容易にできたと認められれば製造物責任法における「欠陥」があるとされ,損害賠償義務を負うことになります。さらに,これが故意のものと認定されると三倍賠償の対象になってしまうので,同種の事件が起こっていた場合にきちんと対策をとっておくということはより重要になります。

(なお,パロマUSAのサイトにはまだ何のお知らせもないように見えますが,このままでいいのでしょうか。。。)

(追記)

toshiさんに,このエントリの「アメリカの製造物責任」の部分を特にお褒めいただいたのですが,読み直してみるとどうにも中途半端なことしか書いていませんでしたので,以下のとおり追記することにします。

※大前提として,アメリカでは製造物責任法制は不法行為法の一部であり,各州で内容が異なります。連邦レベルでは従来の判例法を法文の形にまとめた「リステイトメント」と呼ばれるものが作成されているだけで,これはあくまで各州の立法者の参考とされるものに過ぎません。以下の内容は,各州に概ね共通する一般的な記述であることにご注意下さい。

アメリカにおいて製造物責任が認められるためには,製品が製造業者の手を離れた時点で"defective"であったことを証明する必要があります(これは日本でいう「欠陥」と同じですね)。そして,その"defective"には,①製造上のもの(製造ミスなど),②設計上のもの(設計に問題があるもの),及び,③不十分な表示(警告・説明の表示不足)という各類型があります。

本件で関係するのはおそらく②だと思いますが(③という余地もあるかもしれません),この場合"defective"に該当するためには,より危険が少ない設計変更や代替手段が経済性という面からみて実現可能であったということが(原告によって)立証される必要があります。

ということは,今回の事件で,パロマがこれまで同種事件について知らず,事件の原因が容易に分からないものであった場合には,アメリカの製造物責任法制の下でも責任を問われることはないと思われます。

だた,アメリカで訴訟を起こされると,ディスカバリーを通じて過去の事故に関する検討・調査文書が全て明らかにされるので,何を認識していたかという点について言い逃れをすることは非常に困難になるはずです。

というわけで,やはり同種の事件が起こった場合にはその都度きちんと対策をとっておく(さらにその対策についての文書を管理しておく)ということが重要になるでしょう。

何でもいいでしょ ニュース等で今回の件が取り上げられており、偶然拝見し僭越ながら書き込みさていただきます。

「企業」「会社」というものに幻想を持ちすぎとしか言い様がありません。
「人」は万能ではないし、社会は「人」が築きあげているという常識をことを少しは知って置いて欲しいと思いました。

当たり前に使って、問題があるならば直ちに対応するのには異論を挟みませんが、改造して問題が起きたので責任をとれというのは言いがかりのレベルでしょう?
包丁で殺人事件が起きて、遺族は包丁を作った会社を訴えるでしょうか?
普通の感覚なら、殺害犯を訴えるでしょう。
今回パロマの問題ですが、パロマが人を殺したのでしょうか?
パロマが改造を推奨したのでしょうか?
パロマサービスは悪の秘密結社かなにかですか?

アメリカがどうとか、何の関係があるのかさっぱり分かりません。
何を言いたいのでしょうか?

「印象」「姿勢」「誠意」という文言が見られますが、「お客様は神様」なので、神様に唾するもの罰せいよという薄気味悪い考え方にしか見えません。

私には不用意に改造したばっかりに亡くなったとしか思えませんし、換気をしなかったばかりに亡くなったとしか思えません。
これが当たり前の感覚じゃないでしょうか?

「安全」というのは誰かに助けられてするものではなく、自ら努めて行うものであると私は考えております。
企業、会社も当然社会的な義務を負っていると考えております。
ただし、それは常識的な範疇であり、
限界はあると思います。

弱っている者を叩けば面白いという、わけのわからない風潮に乗らないことを願います。

乱筆乱文失礼いたしました。

通りすがり 「なんでもいいでしょ」さんは、企業の危機管理を全く理解、認識されていないように、お見受けします。

パロマ工業の経営陣と同じ発想に立っていらっしゃいます。

ただし、このように思われる方が多いのではないでしょうか。だから、企業不祥事として表れるわけですから。

コンプライアンス教育を継続して実施していかなければならないということを実感します。

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