群馬大学病院事件から学ぶこと

群馬大学病院事件の検証はまだ続いている。
我々はこの事件からしっかり学ばないといけない。
システムの問題を洗い出して、改善を練らないといけない。
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群馬大病院の死亡事故、最終報告書から学ぶこと ~事故が起きた際に責めるべきは個人ではなくシステム~
 
この原稿は10月3日に配信されたJB PRESSからの転載です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48008
 
武蔵浦和メディカルセンター
ただともひろ胃腸科肛門科
多田 智裕
 
2016年10月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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去る7月30日、群馬大学医学部付属病院は、腹腔鏡手術に伴う死亡事故問題に対して
、医療事故調査委員会は最終報告書
http://www.gunma-u.ac.jp/outline/out008/g7901
を公表しました。

2014年11月、群馬大学医学部付属病院で同じ執刀医による腹腔鏡手術で8人、
開腹手術で10人の患者が、術後100日以内に死亡していたことが報道されました。
このスクープをきっかけに膨大な時間を費やして行われた原因究明調査は、
これで一旦終了となりました。

当初、この一連の事故は、1人の医師による手術に伴って発生したと報道されたことで、
「資質を欠いた医師個人の問題」と理解していた方も多いと思います。

しかし最終報告書では、医師の資質の問題ではなく、“システム上の問題の方が大きかった
“という結論を導き出しています。

一番分かりやすい部分でいうと、事故が続いたあとも再発防止策が取られることなく
手術が継続して行われていたという点です。

つまり、医師個人の問題もさることながら、見て見ぬ振りをした人が多かったということです。
対応策をとらなかった病院のシステム上の問題が大きいという指摘はうなずけるものがあります。

築地市場移転問題などでも見られるように、事故や問題が起きた際に、マスコミは誰が悪いのかと
犯人探しに奔走します。

しかし、再発を防ぐために重要なのは、個人を責めることではなく、
同様の問題が起きないようにシステムを改善することのはずです。
 


●新規手術導入の際の指導体制に不備があった

肝臓の腹腔鏡手術は、胃や大腸の腹腔鏡手術に比較して難易度が高いため、
全国平均でも手術の死亡率が2%と高いものとなっています。

しかし、群馬大学の腹腔鏡手術の死亡率は8%と全国平均に比べて4倍だったことが報道されました。
そのため、「医師個人の技量が一番の問題」というイメージが定着してしまったようです。

調査報告書には、手術の症例数の増加に伴う死亡率の推移が記載されています。
それによると、当初の14例目までの死亡率が28%、40例目までの死亡率が15%、
その後、41例目から103例目までの死亡率は3%(全症例累計で7.8%)と減っていきます。

つまり、経験を積むことにより死亡率が低下する“ラーニングカーブ”が認められています。
新規手術を導入した初期に死亡率が高く、その後、死亡率が減少していく“ラーニングカーブ”が認められる
ということは、「新規手術導入の際の指導体制や管理体制が不十分であった」ことの結果だと言うことができます。

当初の段階で、もっと十分な経験を持った医師の指導のもとで施行するようにするべきでしたし、
数例の事故が起きた段階で検討会を開催して、事故の発生率を下げるべきでした。
その対応を取らなかった体制が問題なのです。

 
●労働量の管理ができていなかった管理部門

報告書では、手術件数と労働時間についての検証もなされています。
2007年度から2014年までの間に肝胆膵手術件数は573件行われています。
当初、担当医は3名いましたが、2009年からは、問題とされた医師1人のみとなります。

2010年から若手医師が加わり2名体制になったものの、ほとんど全ての手術を、
問題とされた医師が担当していたとのことです。
労働時間もそれに伴い、平日は朝8時から夜中までの連日勤務、土日も集中治療室の会議と
病棟回診などがあり、多忙を極めていたのは間違いないようです。


報告書によると、管理部門は手術件数を増やすことを優先し、
労働量を管理する意識が欠如していたとのことです。

事故が起こった際に検討会が開催されず、再発対応策が取られなかったのも、
過重な業務量のためにその余裕がなかったのが原因だったのです。
 

●再発防止策の2つのポイント

最終報告書の内容については、マスコミの当初の関心も薄れているためか、
あまり詳しくは報道されていません。

しかし、同じ事故を繰り返さないために、学ぶべき点は多々あると思います。
具体的な細かい再発防止策は報告書を参照してもらうとして、

ここでは大きなポイントを挙げたいと思います。それは、「チェックシステムの整備」と「チーム制の導入」です。
チェックシステムの整備は、この事例で言うと以下の施策になります。

・安全性が確立されていない治療法については、“倫理審査委員会”を設置して
 十分な準備をした上で開始する。
・組織全体として重大事故の発生を漏れなく把握するべく、安全管理部門が、
 “全死亡症例”だけでなく“集中治療室入院患者の全例”と“予定入院よりも入院期間が
 延長している患者”についてもチェックを行う。
・きちんと安全管理が実施されるよう、安全管理部門は病院長直轄の独立した介入権限を持つようにする。
 安全管理部門長は予算や人事を決める最高意思決定会議に参加する。
・また、チーム制の導入については以下の施策が相当します。
・交代で休みが取得でき、特定の医師に過重労働が及ばないように、
 そして独断での手術適応決定を防ぎ、医療の質を向上させるため、
 主治医制(1人の医師が全てを見る診療方式)での入院診療を原則として禁止する。
 複数の医師のチームで週に2~3回の回診を行い診療するようにする。
・診療科長および管理部門は、チーム人数に見合った手術件数(入院患者数)になるように調整を行い、
 チームとして診療が十分に行える体制を整える。
 これらのチェックシステムを整備してコミュニケーション不足を解消し、
 チームワークが徹底させれば事故が再発することはないでしょう。
 この最終報告書が広く読まれ、理解され、同様の事故が起きないように
 医療改革が広がることを切に願って

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この記事へのコメント

 医療においては、不慮の或いは軽微な過失での業務上の事故については個人(組織も)の罪は問わない。というのは理解できますし、それを問いだしたら怖くて医療行為をできずに結果患者となる国民の不利益となるし、提訴による(医者:組織の)医療対応が出来なくなる時間出来損失すらも国民の不利益で再三長尾先生が当ブログで福岡地裁や神戸地裁の件を挙げて啓蒙して頂いているとおりだと思いますが。

上記ブログを読むと・・・(事件だ:組織又は個人の悪意・殺意があるとはおもいませんが)
組織的な医療安全に対する重過失(管理部門サイドから医療機関の評価に関する要求や収益的な面からの専門的な術数要求)或いは個人的な(担当医の専門医認定や術数を意図した)医療安全に対する判断ミスがあったのではないか?と思ってしまいます。

ただ、長尾先生が指摘するとおり他の機関であれ、
例えば、最高裁が冤罪事件で責めは問われない(検察の偽証は犯罪ですが、最高裁は業務上の判断ミス)
    警察も誤認逮捕で組織の責めを取ったとは聞かないし
    外交で国の不利益があった時に外務省が責任を取ったという表沙汰になることもない
医療も一緒では?

一般の人からすると当初14例目までの28%での死亡率でもOKなのか?
⇒患者の同意の取り方は???というギャップをどううめていくのか?
担当医ではなく管理部門の人員面での未対応も「それでゆるされるのか?」という感じがしますが。

Posted by 匿名でごめん at 2016年10月25日 11:41 | 返信

>群馬大病院の死亡事故、最終報告書から学ぶこと ~事故が起きた際に責めるべきは個人ではなく
>システム~ ////再発防止策の2つのポイント
とあるように、検証や再発防止のための対策が現在進行形であるのを信じて待ちたいです。
ブログで8月頃にも、この題目で載せられていましたが、しばらくした後にTVニュースで、
群馬大学病院の杜撰な事務管理(?)が報じられていました。具体的に何についてだったか、
は覚えていませんが、その時にニュースを聞き流しながら、そういった〔体質〕なのか..と
漠然と思ったのを覚えています。
けれど、命を預けている市民・患者にとっては、〔杜撰・ずさん〕で済まされては、
やりきれません。

Posted by もも at 2016年10月25日 09:34 | 返信

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