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 三菱重工が昨日、2014年3月期に客船事業で約600億円の特別損失を計上すると発表しました。600億円もの損失が発生? 何があったのでしょうか?

 メディアが伝えるところによれば、何でも豪華客船の建造事業で、設計の変更や工事の遅れ、それに資材調達の費用がかさんだためなのだとか。

 それにしても、600億円とは尋常な額ではありません。

 これだけでは事態がよく呑みこめない方もいると思うので、幾つか報道をご紹介します。

 先ず、読売新聞

 「中韓では造れない大型客船受注で特損計上の会社」(3月25日付)

 「三菱重工業は24日、受注建造中の大型クルーズ客船2隻で、当初計画より費用がかさんだため、2014年3月期連結決算に約600億円の特別損失を計上すると発表した。

 発注元の世界最大のクルーズ客船会社「カーニバル社」のグループ会社の要望で、設計や使用する資材が変わったためと説明している。円安効果などで損失分は全社的に対応できるとみて、14年3月期の連結業績予想は変更しない。

 2隻は12万4500総トン(約3300人乗り)と世界最大級で、11年11月に受注した。客船分野はホテル並みの設備を設けるなど特別な技術が必要で、中国や韓国の造船会社は手がけるのが難しいとされ、三菱重工は造船事業の収益の柱と位置づけている」

 中国や韓国の技術力では作れない豪華客船の建造に三菱重工が取り組んでいるのだとか。中国や韓国が嫌いな人々は、なんか喜びそうな表現ですね。

 造船大国、日本万歳! と叫びたいところですが、それにしても結果として600億円もの損失を計上したのでは、何をやっているのだ!と。そうでしょう?

 NHKのニュースもご紹介しましょう。

 「三菱重工 客船事業で600億円の特別損失」(3月24日付)

 「三菱重工業は、ドイツのクルーズ会社向けの大型客船の建造を巡り、設計の変更などで費用が当初の計画より大幅に膨らむ見通しになったとして、ことし3月期の決算でおよそ600億円の特別損失を計上することになりました。これは三菱重工が24日、都内で会見を開いて明らかにしたものです。

 それによりますと、2隻の大型客船を納入する予定のドイツのクルーズ会社から、客室の内装や空調システムなどについて、より高級なものを使用するよう変更を求められました。このため設計の変更が必要になり、資材の調達などにかかる費用が当初の計画より大幅に膨らむ見通しになったことから、三菱重工はことし3月期の決算でおよそ600億円の特別損失を計上することになりました。

 この大型客船は、三菱重工としては基本的な設計から建造までを行う初めての客船で、去年6月に建造に着手し1隻目は来年3月に引き渡しを予定しています。

 会見で三菱重工の鯨井洋一常務執行役員は「引き渡しの時期が遅れるリスクはあるが、できるだけ遅れないよう、われわれも最大限の努力をしたい」と述べました」

 如何でしょうか?

 NHKの報道を信じるならば、船主のクルーズ社から、内装などをより高級なものにするようにとの要請があり、それでコストが高くなったいうことですが、もしそれが事実ならば、そのコスト増は船主が負担すべきものではないのでしょうか?

 どうも納得がいきません。

 そもそも三菱重工は、どのような説明をしたのでしょうか? 三菱重工の記者発表資料をみてみましょう。

「1.損失発生の原因について
 平成23 年11 月に受注したアイーダ・クルーズ向け大型クルーズ客船2隻(注)については、これまでの客船建造実績を踏まえ、必要な対策を迅速に実施するプロジェクト遂行体制を構築して取り組んでまいりました。また、本船はアイーダ・クルーズブランドの1番船(プロトタイプ)となる次世代省エネ客船との認識を持ち、時間をかけて事前検討を進めてまいりました。しかしながら、実際の建造段階における作業進捗に伴い、プロトタイプの客船建造の困難さが顕在化し、またホテルパート等の設計作業が膨大となり、更には大幅な設計変更により、結果として設計作業の遅延が生じました。このことが設計費の増加のみならず、その後の資材調達や建造工程などに悪影響を及ぼし、コスト悪化に繋がりました。

 2.損失の計上について
上記のような状況下、多額の工事損失の発生が見込まれることが判明したため、当該損失を「客船事業関連損失引当金」に繰入れ、同繰入額を特別損失として計上することといたしました。金額は現在精査中でありますが、平成26 年3月期連結決算において、2隻合計で600 億円程度の特別損失を計上する予定です。」

 さあ、如何でしょうか?

 同社によれば、やはり設計に手間取ったことや設計に変更が生じたこと、さらには資材の調達コストが上がったことが原因であるようですが、その責任が船主にあるのか同社にあるのかは明らかにしていないのです。

 いずれにしても、600億円の損失を計上するようでは、これはとんでもない事態だというしかないのですが、実は、それだけでこの問題を済ませてはいけないのです。

 それは、この損失が何故特別損失扱いされなければいけないか、ということなのです。

 当該豪華客船の受注額が幾らであるかということに関しては三菱重工は明らかにしていないようですが、確か相当以前、1000億円程度ではないかと噂されていたことがあるのです。

 どう思いますか? 受注額1000億円に対して600億円もの赤字を出すなんて。

 何度も言いますが、本当に尋常な額ではありません。しかし、まただからこそそれを特別損失として計上しても、世間の人々は当たり前だと思ってしまうのでしょう。こんな損失が特別でなくて、何が特別なのだ、と。

 しかし、そこが問題なのです。

 特別損失とは何か?

 特別損失の典型的な例として挙げられるものは、地震や火災や予想もできない自然災害、或いは労働争議などが原因になって発生する損失を言うのです。

 つまり、例えば、通常業務では順調に儲かっていたものの、予想もできないことが起きて大きな損額を被ったときなどに特別損失として計上をする、と。

 では、今回の三菱重工の件はどうなのでしょう?

 設計の変更や工事の遅れ、或いは調達コストの増加‥これらは全て通常の業務の範疇にあるものであって、予想もできない特別なものではないのです。何が特別かといえば、損失がバカでかいということだけ!

 従って、本当はこの損失は経常損失として計上すべきものなのです。でも、何故か特別損失扱いをしたかった、と。何故ならば、特別扱いをしなければ責任問題が発生をするからなのです。例えば、地震が起きたことによって損失が発生した場合、その責任を経営者が負うことはないからです。

 つまり、特別は損失だということにして、責任問題を回避したいのではないでしょうか?

 でも。それが事実だとしたら、どう考えてもおかしい! 何故ならば、設計のミスや経費見積もりのミスは人為的なものであるからです。

 何故600億円もの追加費用が必要になるような設計のミスが生じたのか?

 いろいろな理由が考えられるでしょう。

 設計技術が未熟であった可能性。しかし、そうではなく豪華客船の建造部門で、どうしても韓国や中国との違いを見せつけたかった、と。そして、欧州勢との戦いにも勝ち抜かねばならなかったので、最初から少々の赤字を覚悟していたということがあるのかもしれません。

 しかし、それにしても600億円もの損失を計上するなんて!

 このような巨額の赤字を計上する割には、余りにも説明内容が不十分であるとしか言いようがありません。

 読売新聞は、中韓には作ることのできない豪華客船を作る技術が三菱重工にはあると敢て書いた訳ですが、600億円もの損失を出しているようでは中国や韓国からも笑われることでしょう。

 三菱重工は、より詳しい情報を提供して株主を納得させなければ、説明責任を果たしたことにはならないのです。

 

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