三越伊勢丹「内定取り消し」事件

三越伊勢丹の内定者のツイッター&取り消し事件(2011年)とは

一人の男子大学生が、同じ大学に通う学生らが起こした準強姦事件に対して、ツイッターでまるでレイプを容認するような発言をし、大炎上が起こりました。

実名などの個人情報が次々と公開される中で、就職内定先である三越伊勢丹へも怒りの矛先は向き、内定取り消しを求める“電凸(電話突撃)”といわれる電話抗議が過熱します。

学生によるソーシャルメディア使用に潜むリスクを、企業、大学の双方が再認識するきっかけとなった事件です。

立教大の学生がツイッターで暴言

レイプ事件についてつぶやく

ことの発端は、この男子学生とは別の学生が社会人女性を集団レイプしたとして逮捕された事件でした。立教大4年生(25)と友人のアルバイト(25)が2011年1月1日、新宿・歌舞伎町で知り合った女性2人を誘い飲酒。その後、予約を取っていたホテルに行き、泥酔した一人の女性(21)が寝込んだところを男性二人が襲った、というものでした。

そして2月20日。このニュースに関して、当該の男子大学生がツイッターでつぶやきます。

▼男子学生の問題のツイート▼

立教生がレイプねー。別に悪いと思わないね。皆同じようなことしてんじゃん。飲み会で勢いでキスしちゃったーとかと変わんねーよクソが。女がわりー。

アカウント削除に追い込まれる

後の弁解ツイートを見ると、被害者女性が飲み会の後ホテルに同行している点から、果たして凶悪な暴行事件なのか?という疑問を呈したかっただけなのかもしれません。しかし、この書き込みからは「レイプ容認」の意図さえ感じ取れ、140字という制約の中で触れる話題として、明らかにふさわしくありませんでした。

間もなく、このコメントが不快だとしてネットでは大騒動に発展します。男子大学生のツイッターやmixiに批判が殺到し、アカウントを削除せざるを得ない状況に追い込まれたのです。

「俺様系」ツイートに不快感が増長

それまでも、社会に対して自分の思ったままを直球でぶつける「俺様」発言が目立っていた男子学生。実際、問題の発言に寄せられた、まっとうな指摘にさえ「本質をつかめない奴は一生底辺」などと一蹴しています。

▼批判に対する男子学生のツイート▼

ツイッターは言いたいこと言う場所。言うこと気にすんならやめろよ。見たくなきゃフォローしなきゃいいし、関わらなければいい。バカばっかだな。

低いリテラシーを露呈

学内では、自らファッションイベントを開催するなどリーダー的な存在で、人脈も広かったようですが、この発言からは傲慢さとリテラシーの低さがうかがえます。

三越伊勢丹バッシング

炎上は内定企業へも飛び火

アカウントから割り出されたユーザー名からmixiが発見され、まもなく実名と写真、大学・学部・所属サークルなどが公表されます。そしてこの学生は、mixiにおいて、就職内定先の「三越伊勢丹」の名前を堂々と明記していました。

炎上に気づいた男子学生は、ツイッターとmixiのアカウントを削除しますが、後のまつりです。世間は、怒りの矛先を内定先の三越伊勢丹にもぶつけます。問い合わせフォームからのメールと全国の店舗に電話で抗議の連絡をし「内定取り消し」を求めることを呼び掛けたのです。そして、その対応の一部始終が掲示板などで公開されることになります。

三越伊勢丹側の対応

抗議に対して、メールで釈明

三越伊勢丹は、抗議に対してメールなどで対応しました。

▼抗議への応対メール 伊勢丹・新宿店(2月21日)▼

毎度格別のお引き立てを賜わり厚く御礼申し上げます。

メールを拝見させていただきました。

お客さまにおかれましては、大変ご心配をお掛けし誠に申し訳ございません。今回の件につきましては、会社の名前が出ていることについては、弊社といたしましても大変遺憾でございます。採用情報につきましては、個人情報として公開できないことは、どうぞご理解賜わりたく存じます。

尚、今回のネットに記載のあった氏名の方が、当グループに入社しないことを確認している旨、申し添えさせていただきます。

何卒、ご理解の程宜しくお願い申し上げます。

株式会社伊勢丹 新宿店
顧客サービス担当

電話抗議のようすを動画配信

問題のツイートの翌日には、電話抗議(“電凸”)のようすをユーストリームで生中継する者も現れました。「騒動について御社の見解を伺いたい」との問いかけに、対応した広報担当の女性からは「今の時点でコメントを申し上げる時期ではないと考えます」という返答が繰り返されました。

ネットメディアは「『レイプ容認』発言で炎上立教大生 内定先大手百貨店に「電突」騒ぎ」と題したニュースを報じ、同日のヤフーニュースのヘッドラインにまで掲載されています。

大学からのフォローなし

三越は、内定者だったかどうかについて、「個人情報」として肯定も否定もしませんでした。そのうえで、この学生は「入社する予定はない」とアピールし、なんとか事態を乗り切ろうとしました。

▼抗議への応対メール 三越(2月26日)▼

この度、三越伊勢丹ホールディングスに入社を内定していると称する学生が、ネット上で社会に反する発言をしていたとの問題について、当グループの社名が出ておりますことは、お客様や学生の皆様をはじめ、多くの皆様にご不快の念をお与えし、ご迷惑をお掛けしておりますことをここに改めてお詫び申し上げます。

この学生が当ホールディングスの内定を受けていたか否かにつきましては、この学生に限らず、一般的に入社を希望された方々とホールディングスとの間の個人的な情報と考えていますので、第三者の方に開示することは控えさせて頂いております。しかし、当社と致しましても事態の発覚当時よりその言動など社会に対する重さを認識し調査を進めて参りました。

その結果、現時点で申し上げられますことは、当該の学生は当ホールディングスやグループ企業であります当社並びに伊勢丹に入社する予定はないことを申し添えさせて頂きたいと存じます。何卒ご理解を賜りたくよろしくお願い申し上げます。

当社並びに伊勢丹は、今後もお客様に安心して楽しいお買物のできる空間を全従業員が力をあわせて提供して参りたいと考えております。今後とも、ご愛顧賜りたくよろしくお願い申し上げます。

平成23年2月26日

株式会社 三 越 日本橋本店
お客さまサービス担当長
実名

内定者への教育の動き広がる

リスクマネジメントの範疇として、社員へのネットリテラシー教育は行っても、当時はまだ、内定学生のネットでの発言を規制するということまでは考えられなかも知れません。この事件をきっかけに、内定者に対する何らかのガイドラインを設ける動きが強まりました。

男子学生への誹謗中傷

身から出た錆とはいえ、この事件が、一学生の人生を大きく狂わせました。

個人情報はあっというまに拡散

問題の男子学生は、ツイッターと同じアカウントでmixiを開設しており、そこには実名のほか、大学、学部名、サークル活動、アルバイト先などが詳細に記されていました。それらは2ちゃんねるやまとめサイトを経て、みるみる間に広まっていきます。

「オシャレゴリラ」が蔑称に

また、インカレ活動のサイトのメンバー紹介にあった、「第一印象=オシャレゴリラ」との自己紹介がネットユーザーたちに祭り上げられ、「立教大のオシャレゴリラ」「オシャゴリ」などの蔑称とともに、面白おかしく加工された写真や似顔絵などが多数流出しました。

立教大学のイメージダウン

都内の名門大学であっても、2万という数の学生のすべての行動を監視することは不可能です。そんな中で起こってしまったこの騒動は、立教大学のブランドにも深い傷を負わせました。

事件から1年以上たったあともGoogleで「立教大生」を検索してみると、このレイプ容認発言事件に関するものが上位を占めていました。人の噂とは異なり、いったん立つと風化しないネット情報は、大学関係者にとってはなげかわしいものに違いありません。